労災保険の障害の系列と序列について 通勤災害(労災保険)Q&A

労災保険の障害の系列と序列について

文責 社会保険労務士 松井 宝史 2023.09.24

小指の中手骨を骨折しました。障害等級はどのようになりますか?

各障害は、能力の減少の程度に応じて、一定の順序のもとに配列されています。

後遺障害等級は、労働能力をどの程度喪失したかに応じて、第1級から第14級までの14段階に段階分けされており、この中での障害同士の等級の順序を障害の序列といいます。

この系列と序列をまとめたものが障害等級表となります。

障害等級表

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質問:通勤途中の交通事故で右手の小指の中手骨を骨折し、3つの関節とも自動ではほとんど動かない状態です。このまま後遺症が残った場合、労災保険の障害等級表に13級4号で小指の用を廃したものがありますが、3つの関節が動かない場合、症状を合わせて、12級や11級となったりするのでしょうか?

回答:後遺障害等級を定める場合には「序列」という考え方があり、この「序列」を乱すような後遺障害等級は認められないことになっています。

手の小指の機能障害の場合、13級4号が最上位の等級ですので、小指の複数の関節に機能障害が残存していても、それらを個別に捉えて13級を超える後遺障害等級が認定されることはありません。

「手指の用を廃したもの」とは、手指の末節骨の半分以上を失い、または中手指節間関節もしくは近位指節間関節に著しい運動障害を残すものとされています。

今回の場合、けがをしていない左手の関節(中手指節間関節もしくは近位指節間関節)の可動域と比べて右手の関節の可動域が50%以下であれば、13級4号に認定されます。

小指についての後遺障害等級は、「第12級 8の2 一手の小指を失つたもの」に該当しない限り、13級を超える等級が認定されることはありません。

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系列と序列について

平成16年6月4日の基発第0604002号の障害等級認定基準の一部改正について〔労働基準法〕によりますと(厚生労働省の下記ページから抜粋)

障害等級認定基準の一部改正について〔労働基準法〕(厚生労働省のサイト)

障害補償の対象とすべき身体障害の程度を定めている障害等級表は、次のごとき考え方に基づいて定められている。

即ち、障害等級表は、身体をまず解剖学的観点から部位に分け、次にそれぞれの部位における身体障害を機能の面に重点を置いた生理学的観点から、たとえば、眼における視力障害、運動障害、調節機能障害及び視野障害のように一種又は数種の障害群に分け(これを便宜上「障害の系列」と呼ぶ。)、さらに、各障害は、その労働能力のそう失の程度に応じて一定の順序のもとに配列されている(これを便宜上「障害の序列」と呼ぶ。)。

障害等級の認定の適正を期するためには、障害の系列及び障害の序列についての認識を深めることにより、障害等級表の仕組みを理解することが、重要である。

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(1) 部位

身体障害は、まず解剖学的な観点から次の部位ごとに区分されている。

イ 眼
(イ) 眼球
(ロ) 眼瞼(右又は左)

ロ 耳
(イ) 内耳等
(ロ) 耳介(右又は左)

ハ 鼻

ニ 口

ホ 神経系統の機能又は精神

ヘ 頭部、顔面、頸部

ト 胸腹部臓器(外生殖器を含む。)

チ 体幹
(イ) せき柱
(ロ) その他の体幹骨

リ 上肢(右又は左)
(イ) 上肢
(ロ) 手指

ヌ 下肢(右又は左)
(イ) 下肢
(ロ) 足指

なお、以上の区分にあたって、眼球及び内耳等については、左右両器官をもって1の機能を営むいわゆる相対性器官としての特質から、両眼球、両内耳等を同一部位とし、また、上肢及び下肢は、左右一対をなす器官ではあるが、左右それぞれを別個の部位とされている。

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(2) 障害の系列

上記のとおり部位ごとに区分された身体障害は、さらに生理学的な観点から、次表(省略)のとおり35種の系列に細分され、同一欄内の身体障害については、これを同一の系列にあるものとして取り扱うこととする。

表は、ここを参照してください。

障害等級認定基準の一部改正について〔労働基準法〕(厚生労働省のサイト)

なお、下記のごとく、同一部位に系列を異にする身体障害を生じた場合は、同一もしくは相関連するものとして取り扱うことが、認定実務上合理的であるので、具体的な運用にあたっては同一系列として取り扱われることとなる。

イ 両眼球の視力障害、運動障害、調節機能障害、視野障害の各相互間

ロ 同一上肢の機能障害と手指の欠損又は機能障害

ハ 同一下肢の機能障害と足指の欠損又は機能障害

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(3) 障害の序列

イ 障害等級表は、上記のとおり労働能力のそう失の程度に応じて身体障害を第1級から第14級までの14段階に区分しており、この場合の同一系列の障害相互間における等級の上位、下位の関係を障害の序列(以下「序列」という。)という。

障害等級表上定めのない身体障害及び同一系列に2以上の身体障害が存する場合の等級の認定にあたっては、障害の序列を十分に考慮すべきものである。(後記「5 障害等級認定の具体的方法(例示解説)」を参照のこと。)

なお、同一系列における序列については、次の類型に大別されるので、それぞれの等級の認定にあたっては留意する必要がある。

(イ) 障害の程度を一定の幅で評価することから、上位等級の身体障害と下位等級の身体障害との間に中間の等級を定めていないもの

(例
1 1眼の視力障害については、視力0.1以下を第10級に視力0.6以下を第13級に格付けているので、第13級には、視力0.1をこえて0.6までの視力障害が含まれることとなり、その中間にあたる視力0.4の視力障害は、第13級となり、視力が0.1以下にならない限り、上位の等級には格付けされない。

2 両眼の視力障害については、両眼の視力0.1以下を第6級に、両眼の視力0.6以下を第9級に格付けているので、第9級には両眼の視力が0.1をこえて0.6までの視力障害が含まれることとなり、1眼の視力0.6、他眼の視力0.1の視力障害は、第9級となる。)

(ロ) 上位等級の身体障害と下位等級の身体障害との区別を、労働能力に及ぼす影響の総合的な判定により行っているもの

(例 胸腹部臓器の障害については、「常に介護を要するもの」(第1級)、「終身労務に服することができないもの」(第3級)、「特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの」(第5級)、「軽易な労務以外の労務に服することができないもの」(第7級)、「服することができる労務が相当な程度に制限されるもの」(第9級)、「障害を残すもの」(第11級)の6段階に区分されており、その労働能力に及ぼす影響を総合的に判定して等級を認定することとしている。)

(ハ) 障害等級表上、最も典型的な身体障害を掲げるにとどまり上位等級の身体障害と下位等級の身体障害との間に中間の身体障害が予想されるにかかわらず定めていないもの

(例
1 1上肢の機能障害については、「1上肢の用を廃したもの」(第5級)、「1上肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの」(第6級)、「1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの」(第8級)、「1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの」(第10級)、「1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの」(第12級)の5段階に区分されており、1上肢の3大関節中の2関節の機能に障害を残すものは、第10級と第12級の中間の程度の身体障害であるにもかかわらず、障害等級表上には格付けられていない。

このように障害等級表における身体障害の定め方が最も典型的な身体障害を掲げるにとどまる場合に、上位等級の身体障害と下位等級の身体障害との等級差が2以上である場合は、障害の序列にしたがって、中間の等級を定めることができる。

2 しかしながら、たとえば「1上肢の用を全廃したもの」(第5級)と「1上肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの」(第6級)のごとく、等級差が1である場合には、障害等級表上、これらの中間の等級はないので、上位等級に達しない限り、下位等級に該当するものとして取り扱うこととなる。)

ロ 欠損障害は、労働能力の完全なそう失であり、障害等級表上、同一部位に係る機能障害よりも上位に格付けられているので、同一部位に欠損障害以外のいかなる身体障害が残存したとしても、その程度は欠損障害の程度に達することはない。

ただし、その例外として、機能の全部そう失については欠損障害と同等に評価されている場合がある(第1級の6と第1級の7又は第1級の8と第1級の9)。

ハ 上記イ、ロによるほか、系列を異にする2以上の身体障害が残存した場合で、障害等級表上組合せにより等級が定められているものについても、その等級間に、いわゆる序列に類する上位下位の関係が明らかにされている。

したがって系列を異にする2以上の身体障害のうちこれら組合せのあるもの以外のものの等級の認定については、原則として併合の方法により、行うこととなるが、上位、下位の関係に留意のうえ等級を認定することが必要である。

なお、この場合、両上肢及び両下肢の欠損障害については、障害等級表に組合せによる等級が掲げられているので、その等級以外の格付けはあり得ない。

したがって、上位等級(第1級の6又は第1級の8)に達しないものは、すべて下位等級(第2級の3又は第2級の4)に該当するものとして取り扱うこととなる。

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