労災保険のアフターケアの対象
アフターケアの対象範囲は、業務災害や通勤災害により被災された方のうち、既に治ゆ(症状固定)していて、後遺症状に揺れ幅が生じていたり、後遺障害に関連した疾病が発生する可能性があり、医学的な視点からアフターケアの必要性を認められている方で、かつ次のいずれかに該当する方です。
傷害補償給付を受けている
障害給付を受けている
傷害補償給付や障害給付を受ける見込みがある
アフターケアを受けるときには、健康管理手帳が必要となります。
健康管理手帳があれば、診察、検査、処方箋などを無料で受けることができます。
労災保険の義肢等補装具
労災保険制度では、社会復帰促進等事業の一環として、義肢等補装具の購入や修理にかかった費用を支給しています。
支給を受けられるのは、業務上の事由または通勤によって負傷し、あるいは疾病にかかった方で、かつ、一定の欠損傷害や機能障害が残っている方です。
支給される義肢等補装具については現在24種目が定められており、義肢、義眼などのほか、車いすや歩行器、つえなども含まれ、各種目で支給のための基準が設けられています。
なお、修理については本人が故意に壊した場合は修理費用が支給されません。
労災保険の義肢等補装具の修理
社会復帰促進等事業により支給された義肢等補装具が壊れてしまい、修理が必要になった場合、修理を受けることができます。
修理の範囲は厚生労働省労働基準局長が定める修理基準によります。
ただし、わざと乱暴に使用していたり、わざと壊した場合は修理を受けられません。
あくまで、通常の範囲内で使用していたのに壊れてしまった場合や、過失により壊れてしまったに限ります。
なお、必要であれば何回でも修理を受けることができます。
社会復帰促進等事業
労災保険では、業務災害や通勤災害によって傷病を被った労働者とその遺族に対して保険給付を行っています。
また、保険給付と併せて被災労働者の社会復帰の促進、被災労働者やその遺族の援護、労働者の安全及び衛生の確保等による労働者の福祉増進を図ることを目的として、社会復帰促進等事業を行っています。
社会復帰促進等事業には、次のようなものがあります。
(平成19年4月1日から、「労働福祉事業」の事業名は「社会復帰促進等事業」に変更されました。)
(1) 療養に関する施設及びリハビリテーションに関する施設の設置及び運営その他被災労働者の円滑な社会復帰を促進するために必要な事業
① 労災病院(付属病院を含みます。)、医療リハビリテーションセンター及び総合せき損センターの設置、運営
② 労災委託病棟の設置
③ 労災リハビリテーション工学センターの設置及び運営
④ 労災リハビリテーション作業所の設置、運営
⑤ 外科後処置
⑥ 義肢等の支給
⑦ 社会復帰指導員の配置
⑧ 振動障害者社会復帰援護金の支給
⑨ 振動障害者雇用援護金の支給
⑩ 振動障害者職業復帰促進事業特別奨励金の支給
⑪ 長期療養者職業復帰援護金の支給
⑫ アフターケア
⑬ 炭鉱災害による一酸化炭素中毒者に係るアフターケア
⑭ 労災はり・きゅう施術特別援護措置
⑮ 頭頸部外傷症候群等に対する職能回復援護
(2) 被災労働者の療養生活の援護、被災労働者の受ける介護の援護、その遺族の就学の援護、被災労働者及びその遺族が必要とする資金の貸付けによる援護その他被災労働者及びその遺族の援護を図るために必要な事業
① 特別支給金の支給
② 休業補償特別援護金の支給
③ 労災就学等援護費の支給
④ 労災療養援護金の支給
⑤ 労災特別援護措置
⑥ 年金担保資金の貸付け
⑦ 労災年金受給者に対する相談
⑧ 労災特別介護施設の設置及び運営
⑨ 納骨堂の設置、運営
⑩ 労災ホームヘルプサービス
(3) 業務災害の防止に関する活動に対する援助、健康診断に関する施設の設置及び運営その他労働者の安全及び衛生の確保、保険給付の適切な実施の確保並びに賃金の支払の確保を図るために必要な事業
① 労働災害防止対策の実施
② 災害防止団体に対する補助
③ 健康診断センターの設置、運営
④ 海外勤務健康管理センターの設置、運営
⑤ 産業保健推進センターの設置、運営
⑥ 小規模事業場産業保健活動支援促進助成金の支給
⑦ 未払賃金の立替払事業の実施
⑧ 勤労者財産形成促進制度への助成
⑨ 中小企業退職金共済制度への助成
通勤災害につきましては、一度はお気軽に当事務所までお問い合わせください。
労災保険の給付基礎日額の原則
給付基礎日額は、原則として、労働基準法第12条の平均賃金に相当する額です。
平均賃金は次のような方法で算定されます。
平均賃金は、原則として、これを算定すべき事由が生じた日前3か月間にその被災労働者に対して支払われた賃金の総額を、その期間の総日数(休日などを含めた暦日数)で除して得た額となります。
但し、賃金締切日が定められているときは、算定事由が生じた日の直前の賃金締切日前3か月間にその被災労働者に対して支払われた賃金の総額を、その期間の総日数(休日などを含めた暦日数)で除して得た額となります。
平均賃金の算定基礎となる賃金とは、労働の対償として使用者から支払われたものをいいますが、年2回支払われるボーナスなど3か月を超える期間ごとに支払われた賃金などは、これに算入されないことになります。
また、3か月の期間の中に、業務上の傷病による療養のために休業した期間、産前産後の休暇期間、育児休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律に基づいて育児休業した期間などがある場合には、その日数とその期間中に支払われた賃金は、差し引いて計算します。
なお、雇入れ後3か月に満たない方については、雇入れ後の賃金総額を雇い入れ後の総日数で除して算定することになります。
労災保険の外科後処置とは
労災保険の療養補償給付または療養給付では、傷病が治癒(症状固定)した後の給付は受けられません。
しかし、治癒したといっても、再手術や理学療法などを行わないと、被災労働者が社会復帰できないこともあります。
そこで、このような治癒後の処置を療養補償給付や療養給付とは別の「外科後処置」として、治癒後の診療を認めているのです。
外科後処置を受けることができるのは、労災保険の障害補償給付、障害給付の支給決定を受けた方のうち、外科後処置により失った労働能力を回復できる見込みのある場合、醜状を軽減し得る見込みのある場合に限られます。
労災保険法で定められている支給制限を受けた結果、現実には障害補償給付、障害給付を受けなかった場合にも、障害等級に該当する障害を残すものであれば外科後処置を受けることができます。
外科後処置はあくまでも障害の軽減が見込まれる方に対して行われるものですから、その見込みのない方の温浴、マッサージ等の診療は対象になりません。
外科後処置の範囲は原則として、整形外科診療、外科的診療、理学療法とされていて、その処置に必要な医療の給付は次のとおりです。
イ 診察
ロ 薬剤又は治療材料の支給
ハ 処置、手術その他の治療
ニ 病院への収容
ホ 看護
外科後処置の効果が期待できる限り、回数に制限なく受けることができます。
外科後処置は、全国32か所の労災病院(医療リハビリテーションセンター、総合せき損センターを含みます。)、都道府県労働局長が指定した全国の国公立等の外科後処置委託病院で実施しています。
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労災保険においての治ゆ
労災保険においては、「治ゆ」といっても必ずしも完治を意味するわけではなく、たとえ症状が残っていても、「治ゆ」とされる場合があります。
労災保険での「治ゆ」は、いわゆる「症状固定」と同じものと考えられます。
傷を負ったり疾病にかかったりした直後に突然起こる症状(急性症状)がおさまり、痛みなどの症状が慢性的に続いていてもその症状が安定したものであり、これ以上治療を続けても大幅な改善は見込めないと判断されると、「治ゆ」となります。
どの段階で「治ゆ」となるかについては、労働基準監督署長が認定します。
その際、医療機関にて患者さんを担当する方の臨床所見を参考にしたり、必要とあらば他分野の医師の意見を参考にすることもあります。
労災保険の遷延治ゆ
たとえば関節の骨折等で、骨癒合をして治療を続ける必要はなくなったけれど、関節の曲げ伸ばしがどのくらいできるかは、実際に何日間か日常生活を行ってみないと判断しかねるというような場合があります。
このような場合は、残っている症状が自然に到達する最終的な状態にまでなったときに、「遷延治ゆ」として障害等級の認定を行います。
なお、遷延治ゆは、6か月以内に症状固定(治ゆ)する見込みがある場合に限ります。
6か月を超える場合には通常の「治ゆ」として扱われます。
労災保険の再発の認定
傷病が「治ゆ」となった後、症状が再び現れたときには、「再発」として認められる場合があります。
どのような場合に再発と認められるのでしょうか。それは、次のすべてを満たす場合です。
特に症状が悪化するようなことをしていなくて、自然に症状が重くなった場合。
傷病が原因で症状が生じているということが医学的に認められる場合。
治療をすることで症状が改善すると期待できる場合。
そのため、業務外の事由によって悪化した理由が特にないからという消極的な理由だけでは認められません。
再発の認定をしてもらうためには、所轄の労働基準監督署長に療養の給付請求書などの提出をします。
労災保険の看護の費用
労災医療の「看護料」は、いわゆる「付添看護」をしたときにのみ対象となります。
付添看護は、緊急の場合ややむを得ない理由がある場合を除き、保健師助産師看護師法に基づく保健師や助産師、看護師または准看護師の免許をもった人によるものであることが欠かせません。
そのため、家族や友人が入院生活上の不便さを補うために行ったものはこれに該当しません。
付添看護が認められるのは、医師が治療上どうしても必要であると認めた場合のみであり、病状が回復して付添看護の必要性が認められない状況になった場合は、それ以降の看護料は認められません。
傷病年金に該当しない場合
原則:算定基礎年額は、負傷又は発病の日以前1年間(雇入後1年に満たない者については、雇入後の期間)に当該労働者に対して支払われた特別給与(3か月を超える期間ごとに支払われる賃金)の総額とする。
例外:特別給与の総額が、給付基礎日額×365×20%または150万円のいずれか低い方を超える時は、どちらか低い方の額を算定基礎年額とする。
算定基礎年額
傷病年金は、通勤による負傷又は疾病の療養開始後1年6か月を経過した日、又はその日以後において、当該負傷又は疾病が治らず、それによる障害の程度が傷病等級表に定める傷病等級に該当し、その状態が継続している場合に、その障害の程度に応じて支給されます。
したがって、療養開始後1年6か月を経過しても、その障害の程度が傷病等級に該当しない場合には、傷病年金は支給されず、主治医が治療の必要性を診断書に記載してある場合は、労働基準監督署長が認定して休業給付が引き続き支給されることとなります。
尚、今後は症状が悪化したと主治医または被災労働者が思われる時と毎年1月1日から1月31日の休業給付の申請をする時は、「傷病の状態に関する報告書及び診断書」を労働基準監督署に提出することになります。
休業給付のスライド制
休業給付の額の算定の基礎として用いる給付基礎日額のスライドについては、平均給与額(厚生労働省で作成している「毎月勤労統計」における「毎月きまって支給する給与」の労働者一人当たり1か月平均額)が算定事由発生日の属する四半期における平均給与額の10%を超え、又は10%を下回るに至った場合に、その比率を基準として厚生労働大臣が定める率を給付基礎日額に乗じた額が休業給付基礎日額となります。
このスライド率は、改定される四半期ごとに厚生労働大臣が官報で告示します。
スライドにより実際に給付基礎日額が改定されるのは、平均給付額が10%を超えて上下した四半期の翌々四半期からです。
改定された休業給付基礎日額についても、その後さらに改定の基礎となった四半期と比較して平均給与額が10%を超えて変動した場合には、同じ方法によってスライド制が適用される。
給付基礎日額
自動変更対象額とは、給付基礎日額の最低保障額のことです。
算定された給付基礎日額が自動変更対象額を下回るときは、自動変更対象額(現在3,970円)を給付基礎日額とします。これが原則です。
令和元年8月1日から適用される自動変更対象額は、3,970円(改定前3,950円)です。(令和元年7月31日厚生労働省告示第69号)
ただし、算定された給付基礎日額が自動変更対象額を下回る場合であっても、スライド率を適用することにより自動変更対象額以上の額となることがあります。
そのような場合には、自動変更対象額より低い額であっても原則的な算定式によって算定された額を給付基礎日額とするということです。
自動変更対象額の変更
厚生労働大臣は、年度の平均給与額が直近の自動変更対象額が変更された前年度の平均給与額を超え、又は下るに至った場合には、その上昇し、又は低下した比率に応じて、翌年度の8月1日以後の自動変更対象額を変更しなければならないことになっています。
自動変更対象額
労災保険(通勤災害も含む)の保険給付には、現物給付と現金給付があります。
現金給付の額の算定の基礎となる額が給付基礎日額です。
原則としての給付基礎日額
給付基礎日額は、原則として労働基準法第12条の平均賃金に相当する額です。
平均賃金は次のような方法で算定されます。
平均賃金は、原則として、これを算定すべき事由が生じた日(賃金締切日が定められているときは、算定事由が生じた日の直前の賃金締切日がこれに当たります)前3か月間にその被災労働者に対して支払われた賃金の総額を、その期間の総日数(暦日数)で除して得た額となります。
つまり、算定事由が生じた日前3か月間の1日当たりの賃金額となります。
平均賃金の算定基礎となる賃金とは、その名称のいかんを問わず、労働の対償として使用者から支払われたものをいいますが、結婚手当、私傷病手当、加療見舞金、退職金など臨時に支払われた賃金、年2回支払われるボーナスなど3か月を超える期間ごとに支払われた賃金などは、これに入れません。
また、3か月の期間の中に、業務上の傷病による療養のために休業した期間、産前産後の休暇期間、育児休業又は介護休業をした期間などがある場合には、その日数とその期間中に支払われた賃金は、差し引いて計算します。
尚、雇入れ後3か月に満たない方については、雇入れ後の賃金総額を雇い入れ後の総日数で除して算定することになります。
逸脱・中断として取り扱わない場合
労働者が通常通勤途中で行うようなささいな行為を行う場合は、逸脱・中断として取り扱わずに「通勤途中」と判断されます。
例としては:
通勤経路の近くにある公衆トイレの使用
通勤経路の近くにある公園での短時間の休息
通勤経路上のお店でのたばこ、雑誌等の購入
駅構内でのジュースの立ち飲み
通勤経路上の店でのどの渇きをいやすためごく短時間お茶やビールなどを飲む場合
労災保険の義肢等補装具
社会復帰促進等事業により支給された義肢等補装具が壊れてしまい、修理が必要になった場合、修理を受けることができます。
修理の範囲は厚生労働省労働基準局長が定める修理基準によります。
ただし、わざと乱暴に使用していたり、わざと壊した場合は修理を受けられません。
あくまで、通常の範囲内で使用していたのに壊れてしまった場合や、過失により壊れてしまったに限ります。
なお、必要であれば何回でも修理を受けることができます。
労災保険の義肢等補装具の修理
労災保険制度では、社会復帰促進等事業の一環として、義肢等補装具の購入や修理にかかった費用を支給しています。
支給を受けられるのは、業務上の事由または通勤によって負傷し、あるいは疾病にかかった方で、かつ、一定の欠損傷害や機能障害が残っている方です。
支給される義肢等補装具については現在24種目が定められており、義肢、義眼などのほか、車いすや歩行器、つえなども含まれ、各種目で支給のための基準が設けられています。
なお、修理については本人が故意に壊した場合は修理費用が支給されません。