賞与からの控除(社会保険料)
文責 社会保険労務士 松井 宝史 2023.05.07
健康保険料、厚生年金保険料は賞与からも控除
年3回まで支給される賞与や決算手当は、健康保険料、厚生年金保険料を控除します。
40歳以上の従業員は、介護保険料も控除します。
具体的には次のように定められています。
標準賞与額に次の表の保険料率をかけて保険料を算出し、事業主と従業員が1/2ずつ負担をします。
※標準賞与額は支払う賞与額から1,000円未満を切り捨てた額です。
※標準賞与額には上限額が設けられています。
健康保険の場合は、年度(4月1日から翌年3月31日まで)あたり累計573万円まで
厚生年金保険は1月間の賞与につき150万円までと定められています。
※賞与の支払いが年4回以上ある場合は、給与とみなし、標準報酬月額の対象となります。
賞与の社会保険料について、夏の賞与とは厚生年金の料率が違いますので、ご注意下さい。
愛知県の場合:
健康保険 0.05005(介護保険料対象者は 0.0091を加算して 0.05915)
厚生年金 0.0915
雇用保険 0.006(建設業は 0.007)
雇用保険は、賞与支払額に料率を掛けます。
健康保険・厚生年金は、賞与支払額の1000円未満を切り捨ててから料率を掛けます。
折半では |
|||
健康保険 (愛知県の場合) |
40歳未満 | 0.1001 |
0.05005 |
40歳以上65歳未満 (介護保険料率を含む) |
0.1001+0.0182 |
0.05915 |
|
厚生年金保険 |
0.183 |
0.0915 |
例1)賞与額が482,300円で40歳未満の場合
標準賞与額は482,000円となります。
健康保険料(愛知県の場合) 482,000円×0.05005=24,124.1円
小数点以下は50銭以下切捨て、50銭を超える場合は切り上げとなります。
例2)賞与額が482,300円で40歳以上65歳未満の場合
介護保険料がかかってきます。
482,000円×0.05915=28,510.3円
例3)厚生年金保険料
482,000円×0.0915=44,103円
退職する月に支払われる賞与
退職日の翌日(資格喪失日)が属する月に支給される賞与は、社会保険料控除の対象とはなりません。
つまり賞与の計算において、社会保険料を控除しないということです。
本人から控除しないので、会社負担も無くなります。
例えば、賞与支給日12月13日、退職日12月25日の場合、12月13日支給の賞与計算において、社会保険料を賞与計算において控除しません。
退職日が12月31日(資格喪失日1月1日)の場合は、賞与から社会保険料を控除します。
賞与支払い月に40歳に達する被保険者がいる時
賞与支払い月に40歳に達する被保険者へ支払う賞与からは、介護保険料を控除します。
但し、給与の場合は原則、前月分の社会保険料を控除するので、40歳に達した月に支払われる給与からは介護保険料を控除しません。
例えば、賞与支払い日12月13日、12月15日に40歳に達した方は、介護保険料を控除します。
産前産後休業および育児休業期間中の賞与
産前産後休業および育児休業の申し出をした方の社会保険料の免除期間中に支払う賞与は、毎月の社会保険料と同じように免除となります。
但し、雇用保険料、所得税は控除の対象となります。
賞与からの控除(雇用保険料)
毎月の給与と同様のやり方で、賞与からも雇用保険料を控除します。
令和5年度の料率
事業の種類 |
保険料率 |
会社負担の負担率 |
労働者の負担率 |
一 般 |
15.5/1000 |
9.5/1000 |
6/1000 |
農林水産 清酒製造 |
17.5/1000 |
10.5/1000 |
7/1000 |
建 設 |
18.5/1000 |
11.5/1000 |
7/1000 |
賞与支給額に雇用保険 0.006(建設業は 0.007)を乗じた数字となります。
賞与から控除する源泉所得税
○ 原則として「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を使用
○「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を使った求め方
「賞与の支給総額から社会保険料を控除した後の金額」×「税率」
税率は、「賞与に対する源泉徴収額の算出率の表」を使用して次のように求めます。
☆算出率の表の甲・乙欄使用(月額表と同じ)
(1)扶養控除等申告書を提出している人の場合・・・甲欄を適用
賞与から控除する源泉所得税(参考資料1)
A |
提出されている「給与所得者の扶養控除等申告書」により扶養親族等の数を確認 |
↓ ↓ |
|
「算出率の表」の扶養親族等の数の該当する欄を求める。 | |
B |
次に、前月の給与台帳により社会保険料控除後の給与等の金額を確認 |
↓ ↓ |
|
「算出率の表」の「前月の社会保険料控除後の給与等の金額」に該当する行(金額区分)を求める。 | |
C |
Bでもとめた行(金額区分)の左端に「賞与の金額に乗ずべき率」の欄 |
↓ ↓ |
|
示されている数字が税率となる。 |
※1.「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」に扶養親族等の数ごとに「○○千円以上○○千円未満」と示されている金額は、賞与金額ではなく、前月の社会保険料控除後の給与等の金額
※2.算出率の表の税率0%の表示→源泉徴収税無し
※3.扶養親族等の数が7人を超えた場合、月額表のときとは異なり、7人を何人超えても7人以上の欄を使用
(2)扶養控除等申告書を提出していない人の場合・・・乙欄を適用
賞与から控除する源泉所得税(参考資料2)
乙欄を適用
前月の社会保険料控除後の給与等の金額 | 税率 |
278,000未満 | 10% |
278,000以上510,000未満 | 20% |
510,000以上563,000未満 | 30% |
563,000以上 | 35% |
○例外
(3)前月中の給与等の金額がない場合
(前月中の給与等の金額が社会保険料の金額以下の場合も含む)
賞与から控除する源泉所得税(参考資料3)
A 社会保険料控除後の賞与の金額 ÷ 賞与の計算の基礎期間の月数
例.賞与の計算基礎期間が6ヶ月の場合 賞与の金額÷6
B 次に、Aで求めた金額を月額表に当てはめて、毎月の給与から源泉徴収したのと同じように税額を求める。
C B で求めた税額 × 賞与の計算基礎期間の月数
↓
↓
賞与から控除される所得税額
(4)賞与の金額(社会保険料控除後)が前月中の給与等の金額(社会保険料控除後)の10倍を越える場合
賞与から控除する源泉所得税(参考資料4)
A 社会保険料控除後の賞与の金額 ÷ 賞与の計算の基礎期間の月数
例.賞与の計算基礎期間が12ヶ月の場合 賞与の金額÷12
B 次に、Aで求めた金額と前月の社会保険料控除後の給与等の金額の合計額を月額表に当てはめ、毎月の給与から源泉徴収したのと同じように税額を求める。
C (Bで求めた税額-前月中給与支払時の税額)×賞与の計算基礎期間の月数
↓
↓
賞与から控除される所得税額
控除したものの納付
○賞与の支払 控除した社会保険料及び所得税の納付
(1)賞与の支払
賞与の差し引き支給額は、①通貨で、②直接従業員に、③その全額を支払います。
(2)健康保険、厚生年金保険の納付
年金事務所に「賞与支払届総括表」「健康保険・厚生年金保険被保険者賞与支払届」を、賞与の支払日から5日以内に提出。
届出用紙のほかに、フロッピーディスクによる届出も可能
ただし、この場合も「賞与支払届総括表」は紙による提出となります。
社会保険事所は、翌月の保険料納入告知書で一般の保険料と一緒に通知を行うので、毎月の一般保険料と合算して、翌月末までに納付します。
※健康保険及び厚生年金保険の保険料は、資格喪失の月については保険料の負担はありません。
6月20日に賞与の支払の場合
6月25日に退職 → 保険料はなし
6月30日に退職 → 保険料あり
(7月1日喪失のため)
(3)雇用保険料について
毎年1回、7月10日までの年度更新にて精算、納付します。
給与と合わせて計算します。
(4)源泉所得税の納付
その月に支払った給与から源泉徴収した所得税を納付するのと同じ納付書を使い、一緒に納付。
納付書には、「賞与」という欄があり、従業員の賞与からの源泉所得税については、ここに記入。
納付 原則 賞与を支払った月の翌月10日までに
例外 納期の特例を受けている場合にはその期日(7月10日または1月20日)
社会保険料の目安
賞与の時期によく質問を受けるのが、社会保険料の金額です。
計算方法よりも金額そのもの!
それで、次のような表を作りました。
端数処理の関係で、1円単位まで正確な数字ではありません。あくまで目安としてご利用下さい。
(愛知県版)
賞与額 |
10,000 |
50,000 |
100,000 |
200,000 |
健康保険料(愛知県版) |
591 |
2,857 |
5,915 |
11,830 |
介護保険料 |
91 |
455 |
910 |
1,820 |
厚生年金保険料 |
915 |
4,575 |
9,150 |
18,300 |
雇用保険料 |
60 |
300 |
600 |
1,200 |
え~と、25万円なら、この列とこの列を足して・・・なんて、ご利用いただいているようです。
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