脳・心臓疾患での労災保険認定の総合的な評価(令和3年9月14日改正)
文責 社会保険労務士 松井 宝史 2022.11.23
労働時間と労働時間以外の負荷要因の総合的な評価
労働時間以外の負荷要因において一定の負荷が認められる場合には、労働時間の状況をも総合的に考慮し、業務と発症との関連性が強いといえるかどうかを適切に判断します。
具体的には以下のとおりです。
労働時間の評価の③の水準には至らないがこれに近い時間外労働が認められる場合には、特に他の負荷要因の状況を十分に考慮し、そのような時間外労働に加えて一定の労働時間以外の負荷が認められるときには、業務と発症との関連性が強いと評価できること
労働時間+労働時間以外の負荷要因=総合的に考慮して判断
★労働時間以外の負荷要因
〇勤務時間の不規則性
拘束時間の長い業務
拘束時間数、実労働時間数、労働密度(実作業時間と手待時間との割合等)、休憩・仮眠時間数及び回数、休憩・仮眠施設の状況(広さ、空調、騒音等)、業務内容等
休日のない連続勤務
連続勤務日数、連続労働日と発症との近接性、休日の数、実労働時間数、労働密度(実作業時間と手待時間との割合等)、業務内容等
勤務間インターバルが短い勤務
勤務間インターバルが短い勤務の程度(時間数、頻度、連続性等)、業務内容等
※長期間の過重業務の判断に当たっては、勤務間インターバルがおおむね11時間未満に勤務の有無、時間数、連続性等について評価
不規則な勤務・交替制勤務・深夜勤務
予定された業務スケジュールの変更の頻度・程度・事前の通知状況、予定された業務スケジュールの変更の予測の度合、交替制勤務における予定された始業・終業時刻のばらつきの程度、勤務のため夜間に十分な睡眠が取れない程度(勤務の時間帯や深夜時間帯の勤務の頻度・連続性)、一勤務の長さ(引き続いて実施される連続勤務の長さ)、一勤務中の休憩の時間数及び回数、休憩や仮眠施設の状況(広さ、空調、騒音等)、業務内容及びその変更の程度
〇事業場外における移動を伴う業務
出張の多い業務
出張(特に時差のある海外出張)の頻度、出張が連続する程度、出張期間、交通手段、移動時間及び移動時間中の状況、移動距離、出張先の多様性、宿泊の有無、宿泊施設の状況、出張中における睡眠を含む休憩・休息の状況、出張中の業務内容
併せて出張による疲労の回復状況等も踏まえて評価
飛行による時差については、時差の程度(特に4時間以上の時差の程度)、時差を伴う移動の頻度、移動の方向等の視点から検討
出張に伴う勤務時間の不規則性については「勤務時間の不規則性」により評価
その他事業場外における移動を伴う業務
移動(特に時差のある海外への移動)の頻度、交通手段、移動時間及び移動時間中の状況、移動距離、移動先の多様性、宿泊の有無、宿泊施設の状況、宿泊を伴う場合の睡眠を含む休憩・休息の状況、業務内容等
併せて移動による疲労の回復状況等も踏まえて評価
時差及び移動に伴う禁句時間の不規則性については「出張の多い業務」と同様に評価
〇心理的負荷を伴う業務
別表1及び別表2に掲げられている日常的に心理的負荷を伴う業務又は心理的負荷を伴う具体的出来事等
〇具体的負荷を伴う業務
業務内容のうち重量物の運搬、人力での掘削作業などの身体的負荷が大きい作業の種類、作業強度、作業量、作業時間、歩行や立位を伴う状況等のほか、当該業務が日常業務と質的に著しく異なる場合にはその程度(事務職の労働者が著しい肉体労働を行うなど)
〇作業環境
温度環境
寒冷・暑熱の程度、防寒・防暑衣類の着用の状況、一連続作業時間中の採暖・冷却の状況、慣例と暑熱との交互のばく露の状況、著しい温度差がある場所への出入りの頻度、水便補給の状況等
※長期間の過重業務の判断に当たっては、付加的に評価
騒音
おおむね80DBを超える騒音に頻度、そのばく露時間・期間・防音保護具の着用の状況等
※長期間の過重業務の判断に当たっては、付加的に評価