脳梗塞(脳出血・くも膜下出血)心臓疾患(心筋梗塞)の労災保険申請

脳梗塞(脳出血・くも膜下出血)、心筋梗塞、狭心症の労災保険の申請

文責 社会保険労務士 松井 宝史 2024.10.14

長時間労働による脳疾患

お勤め中のご主人がもし脳梗塞になって、会社を休むようになったらどうしたらいいでしょうか?

病院に入院し、治療を受けるようになったら大変ですね。

まずは会社の総務担当者にお話しして、健康保険の傷病手当金の手続きについて説明を受けてください。

欠勤4日目から傷病手当金の給付が出ることになっています

脳梗塞での労災申請の流れは下記のようになっています。

業務による明らかな負荷や長時間労働により、脳梗塞などの脳疾患が発症した場合、病院に入院したりして治療を受けることになります。

治療を受けている間、働けない状態となれば、健康保険の「傷病手当金」の申請をすることになります。

というのは、労災の認定がおりるのに時間がかかるからです。

傷病手当金の申請をしながら、労災保険の申請の準備をしていきます。

障害年金の請求で、初診日から起算して1年6か月を経過する前に障害認定日として取り扱うものがあります。

脳血管障害による機能障害が対象の疾病となっています。

初診日から6か月経過した日以降(固定と認められた場合)となっています。

傷病手当金は1年6か月もらえますが、同時に受給となった場合は、併給調整されます。

しかし、障害年金の受給開始(実際に年金の給付がある)は、申請してから4か月ぐらいかかってしまいます。

その間の生活費に困ってしまうので、主治医の先生が固定と言われたら、申請の準備に取り掛かりたいですね。

治療を終了ならば、傷病手当金が止まってしまう可能性もあります。

傷病手当金は、会社の給与の締め切り単位で毎月請求をしていきます。

最長通算して1年6か月給付があります。

脳梗塞で入院した人は、急性期からリハビリ期に入ると、転医などしてリハビリ専門病院でリハビリをしていきます。

言葉の障害や視野の障害、身体の麻痺の障害などが出てきますが、リハビリを一生懸命やって早く社会に復帰ができることを祈っています。

過重労働(過労)による脳疾患障害(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血、高血圧性脳症)で本当に困っている方、悩んでいる方の相談に応じています

 

一緒に解決していきましょう。

最近、当事務所が労災申請した方は、長時間労働が原因で脳梗塞を発症しました。

どこに相談していいか分からなかったようで、まずは法律事務所の弁護士先生に相談したそうです。

その後、その弁護士先生から労災保険の申請のお問い合わせがありました。

個人の方の労災申請を専門にしておる社会保険労務士が現在2名在籍しております。

まずは被災した労働者またはそのご家族の方と面談をさせていただき、どのように労災申請を進めたらいいかをご相談しながら考えていきます。

愛知労務の問い合わせをLINEでできるようにしました。下記バナーをクリックしていただき、お友達登録をお願いします。

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長時間労働のデータや資料があるかどうか?労働基準監督署に提出する書類はどのように準備すればいいか?現在の困りごとは何か?症状はどのようになっているか?などです。

複数の会社等で雇用されている労働者の場合はこちらを参照してください。

健康保険に入っているのであれば、差し当たっての生活費に困るので「傷病手当金の申請」をお話しさせていただいております。

労災保険の休業補償給付の申請と同時進行をしていきます。

労災申請が認定されれば、健康保険の方に傷病手当金の返還をしますが、その手続きの代行も当事務所でやっています。

ご安心ください。

また後遺症が残る場合が多いので、障害補償給付の申請をおこなっていきます。

申請のお手伝いも同時にさせていただいています。

どのくらいの等級に認定されそうなのか?などもアドバイスをさせていただきます。

また、障害厚生年金の申請も実施しています。

労災保険の障害と同時進行になる場合が多いです。

どうぞお気軽にお声掛けをお待ちしています。

労災保険の無料相談を実施しています。

お気軽にご相談ください。メール相談はこちら

業務上の疾病について

業務との聞に相当因果関係が認められる疾病については、労災保険給付の対象となります(これを「業務上疾病」といいます)。
業務上疾病とは、労働者が事業主の支配下にある状態において発症した疾病ではなく、事業主の 支配下にある状態において有害因子にさらされたことによって発症した疾病をいいます。
例えば、労働者が就業時間中に脳出血を発症したとしても、その発症原因となった業務上の理由が認められない限り、業務と疾病との聞に相当因果関係は成立しません。
一方、就業時間外における発症であっても、業務による有害因子にさらされたことによって発症したものと認められれば、業務と疾病との聞に相当因果関係が成立し、業務上疾病と認められます。


一般的に、労働者に発症した疾病について、次の3要件が満たされる場合には、原則として業務上疾病と認められます。
①労働の場に有害因子が存在していること
業務に内在する有害な物理的因子、化学物質、身体に過度の負担のかかる作業、病原体などの諸因子を指します。
②健康障害を起こしうるほどの有害因子にさらされたこと
健康障害は、有害因子にさらされるととによって起こりますが、その健康障害を起こすに足りる有害因子の量、期間にさらされたことが認められなければなりません。
③発症の経過および病態が医学的にみて妥当であること
業務上の疾病は、労働者が業務に内在する有害因子に接触するととによって起とるものなので、少なくともその有害因子にさらされた後に発症したものでなければなりません。
しかし、業務上疾病の中には、有害因子にさらされた後、短期間で発症するものもあれば、相当長期間の潜伏期聞を経て発症するものもあり、発症の時期は有害因子の性質や接触条件などによって異なります。
したがって、発症の時期は、有害因子にさらされている間またはその直後のみに限定されるものではありません。

長時間労働(過重労働)による脳梗塞の労災認定基準

さて、長時間労働の場合、平日の残業だけではなく、休日労働の時間数も加算されます。

新認定基準によれば、発症前2か月ないし6か月にわたって、1か月あたりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症の関連性は強いとして、原則として業務上と判断されます。

「1か月あたりおおむね80時間を超える」とは発症前2か月間、3か月間、4か月間、5か月間、6か月間のいずれかの期間としており、そのうち1か月あたりの時間数が最大となる期間を評価の対象にすることになります。

6か月間のみの平均で判断されるものではないことに留意してください。

ただ、時間外労働が認定に直結するわけではありません。

あくまで目安であって、さまざまな角度から業務の過重性を立証したり、基礎疾病の調査を行うことは必要ですので、注意してください。

トラック運転者の「改善基準告示」の改正 令和6年4月より(参考にしてください)

令和3年9月14日付け基発第0914第1号で脳・心臓疾患の労災認定基準が改正されました。

長時間の過重労働

労働時間と労働時間以外の負荷要因を総合評価して労災認定することを明確化

発症前1か月間に100時間または2~6か月間平均で月80時間を超える時間外労働は、発症との関連性は強いという水準には至らないがこれに近い時間外労働+一定の労働時間以外の負荷がある場合は、業務との発症との関連が強いと評価することを明示されました。

労働時間以外の負荷要因を見直し

・勤務間インターバルが短い勤務

・身体的負荷を伴う業務など

上記2つが評価対象として追加されました。

短期間の過重業務・異常な出来事

業務と発症との関連性が強いと判断できる場合を明確化

「発症前おおむね1週間に継続して深夜時間帯に及ぶ時間外労働を行うなど過度な長時間労働が認められる場合」等が例示されました。

対象疾病に追加

認定基準の対象疾病に「重篤な心不全」が追加されました。

脳・心臓疾患の認定基準の概要

1 基本的な考え方

(1)脳・心臓疾患は、血管病変等が長い年月の生活の営みの中で、形成、進行及び増悪するといった自然経過をたどり発症する。

(2)しかしながら、業務による明らかな過重負荷が加わることによって、血管病変等がその自然経過を超えて著しく増悪し、脳・心臓疾患が発症する場合がある。

(3)脳・心脳疾患の発症に影響を及ぼす業務による明らかな過重負荷として、発症に近接した時期における負荷のほか、長期間にわたる疲労の蓄積も考慮することとした。

(4)また、業務の過重性の評価に当たっては、労働時間、勤務形態、作業環境、精神的緊張の状態等を具体的かつ客観的に把握、検討し、総合的に判断する必要がある。

脳の損傷(高次脳機能障害)による後遺障害の障害等級の認定

脳・心臓疾患の対象疾病は下記のものとなります。


(1) 脳血管疾患

脳内出血(脳出血)

くも膜下出血

脳梗塞

エ 高血圧性脳症

(2) 虚血性心疾患等

心筋梗塞

狭心症

ウ 心停止(心臓性突然死を含む。)心室細動心房細動(脳梗塞の原因になる)

大動脈乖離

重篤な心不全

不整脈から心房細動や心室細動になった場合 期外収縮

脳・心臓疾患の認定要件

認定要件

次の(1)、(2)又は(3)の業務による明らかな過重負荷を受けたことにより発症した脳・心臓疾患は、労基則別表第一の二第9九号に該当する疾病として取り扱う。

(1) 発症直前から前日までの間において、発生状態を時間的及び場所的に明確にし得る異常な出来事に遭遇したこと(異常な出来事)。

(2) 発症に近接した時期において、特に過重な業務に就労したこと(短期間の過重業務)。

(3) 発症前の長期間にわたって、著しい疲労の蓄積をもたらす特に過重な業務に就労したこと(長期間の過重業務)。

脳・心臓疾患の認定要件の運用

認定要件の運用

(1) 脳・心臓疾患の疾患名及び発症時期の特定について

ア 疾患名の特定について
脳・心臓疾患の発症と業務との関連性を判断する上で、発症した疾患名は重要であるので、臨床所見、解剖所見、発症前後の身体の状況等から疾患名を特定し、対象疾病に該当することを確認すること。

イ 発症時期の特定について
脳・心臓疾患の発症時期については、業務と発症との関連性を検討する際の起点となるものであるので、臨床所見、症状の経過等から症状が出現した日を特定し、その日をもって発症日とすること。

(2) 過重負荷について
過重負荷とは、医学経験則に照らして、脳・心臓疾患の発症の基礎となる血管病変等をその自然経過を超えて著しく増悪させ得ることが客観的に認められる負荷をいう。

ア 異常な出来事について

(ア) 異常な出来事

a 極度の緊張、興奮、恐怖、驚がく等の強度の精神的負荷を引き起こす突発的又は予測困難な異常な事態

b 緊急に強度の身体的負荷を強いられる突発的又は予測困難な異常な事態

c 急激で著しい作業環境の変化

(イ) 評価期間

発症直前から前日までの間

(ウ) 過重負荷の有無の判断

遭遇した出来事が前記(ア)に掲げる異常な出来事に該当するか否かによって判断すること。

イ 短期間の過重業務について

(ア) 特に過重な業務

特に過重な業務とは日常業務(通常の所定労働時間内の所定業務内容をいう。)に比較して特に過重な身体的、精神的負荷を生じさせたと客観的に認められる業務をいう。

(イ) 評価期間
発症前おおむね1週間

(ウ) 過重負荷の有無の判断

特に過重な業務に就労したと認められるか否かについては、①発症直前から前日までの間について、②発症直前から前日までの間の業務が特に過重であると認められない場合には、発症前おおむね1週間について、業務量、業務内容、作業環境等を考慮し、同僚等にとっても、特に過重な身体的、精神的負荷と認められるか否かという観点から、客観的かつ総合的に判断すること。

具体的な負荷要因は、次のとおりである。

a 労働時間

b 不規則な勤務

c 拘束時間の長い勤務

d 出張の多い業務

e 交替制勤務・深夜勤務

f 作業環境(温度環境・騒音・時差)

g 精神的緊張を伴う業務

(b~gの項目の負荷の程度を評価する視点は次のとおり)

負荷の程度を評価する視点

★特に過重な業務

日常業務に比較して特に過重な身体的、精神的負荷を生じさせたと客観的に認められる業務をいいます。
※「日常業務」とは、通常の所定労働時間内の所定業務内容をいいます。

★過重負荷の有無の判断

著しい疲労の蓄積をもたらす特に過重な業務に就労したと認められるか否かは、業務量、業務内容、作業環境等を考慮し、同種労働者にとっても、特に過重な身体的、精神的負荷と認められる業務であるか否かという観点から、客観的かる総合的に判断されます。

業務の過重性の具体的な評価をするには、疲労の蓄積の観点から、労働時間の他、労働時間以外の負荷要因について十分検討をしてくれます。

※「同種労働者」とは、脳。心臓疾患を発症した労働者と職種、職場における立場や職責、年齢、経験等が類似する者をいい、基礎疾患を有していたとしても日常業務を支障なく遂行できる者を含みます。

労働時間

★労働時間の評価

疲労に蓄積をもたらす最も重要な要因と考えられる労働時間に着目すると、その時間が長いほど、業務の過重性が増します。具体的には、発症日を起点とした1か月単位の連続した期間について、以下の①~③を踏まえて判断します。

①発症前1か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね45時間を超える時間外労働が認められない場合は、業務と発症との関連性が弱いと評価できること

②おおむね45時間を超えて時間外労働時間が長くなるほど、業務と発症との関連性が徐々に強まると評価できること

③発症前1か月におおむね100時間又は発症前2か月ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いと評価できること

※「発症前1か月間ないし6か月間」は、発症前1か月間、発症前2か月間、発症前3か月間、発症前4か月間、発症前5か月間、発症前6か月間のすべての期間をいいます。

※「時間外労働」とは、1週間当たり40時間を超えてろうどうした時間をいいます。

※「発症前2か月間ないし6か月間」は、発症前1か月間、発症前2か月間、発症前3か月間、発症前4か月間、発症前5か月間、発症前6か月間のいずれかの期間をいいます。

★労働時間と労働時間以外の負荷要因の総合的な評価

労働時間以外の負荷要因において一定の負荷が認められる場合には、労働時間の状況をも総合的に考慮し、業務と発症との関連性が強いといえるかどうかを適切に判断します。
具体的には以下のとおりです。

労働時間の評価の③の水準には至らないがこれに近い時間外労働が認められる場合には、特に他の負荷要因の状況を十分に考慮し、そのような時間外労働に加えて一定の労働時間以外の負荷が認められるときには、業務と発症との関連性が強いと評価できること

労働時間+労働時間以外の負荷要因=総合的に考慮して判断

★労働時間以外の負荷要因

〇勤務時間の不規則性

拘束時間の長い業務

拘束時間数、実労働時間数、労働密度(実作業時間と手待時間との割合等)、休憩・仮眠時間数及び回数、休憩・仮眠施設の状況(広さ、空調、騒音等)、業務内容等

休日のない連続勤務

連続勤務日数、連続労働日と発症との近接性、休日の数、実労働時間数、労働密度(実作業時間と手待時間との割合等)、業務内容等

勤務間インターバルが短い勤務

勤務間インターバルが短い勤務の程度(時間数、頻度、連続性等)、業務内容等

※長期間の過重業務の判断に当たっては、勤務間インターバルがおおむね11時間未満に勤務の有無、時間数、連続性等について評価

不規則な勤務・交替制勤務・深夜勤務

予定された業務スケジュールの変更の頻度・程度・事前の通知状況、予定された業務スケジュールの変更の予測の度合、交替制勤務における予定された始業・終業時刻のばらつきの程度、勤務のため夜間に十分な睡眠が取れない程度(勤務の時間帯や深夜時間帯の勤務の頻度・連続性)、一勤務の長さ(引き続いて実施される連続勤務の長さ)、一勤務中の休憩の時間数及び回数、休憩や仮眠施設の状況(広さ、空調、騒音等)、業務内容及びその変更の程度

〇事業場外における移動を伴う業務

出張の多い業務

出張(特に時差のある海外出張)の頻度、出張が連続する程度、出張期間、交通手段、移動時間及び移動時間中の状況、移動距離、出張先の多様性、宿泊の有無、宿泊施設の状況、出張中における睡眠を含む休憩・休息の状況、出張中の業務内容

併せて出張による疲労の回復状況等も踏まえて評価

飛行による時差については、時差の程度(特に4時間以上の時差の程度)、時差を伴う移動の頻度、移動の方向等の視点から検討

出張に伴う勤務時間の不規則性については「勤務時間の不規則性」により評価

その他事業場外における移動を伴う業務

移動(特に時差のある海外への移動)の頻度、交通手段、移動時間及び移動時間中の状況、移動距離、移動先の多様性、宿泊の有無、宿泊施設の状況、宿泊を伴う場合の睡眠を含む

休憩・休息の状況、業務内容等

併せて移動による疲労の回復状況等も踏まえて評価
時差及び移動に伴う禁句時間の不規則性については「出張の多い業務」と同様に評価

〇心理的負荷を伴う業務

別表1及び別表2に掲げられている日常的に心理的負荷を伴う業務又は心理的負荷を伴う具体的出来事等

〇具体的負荷を伴う業務

業務内容のうち重量物の運搬、人力での掘削作業などの身体的負荷が大きい作業の種類、作業強度、作業量、作業時間、歩行や立位を伴う状況等のほか、当該業務が日常業務と質的に著しく異なる場合にはその程度(事務職の労働者が著しい肉体労働を行うなど)

〇作業環境

温度環境

寒冷・暑熱の程度、防寒・防暑衣類の着用の状況、一連続作業時間中の採暖・冷却の状況、慣例と暑熱との交互のばく露の状況、著しい温度差がある場所への出入りの頻度、水便補給の状況等

※長期間の過重業務の判断に当たっては、付加的に評価

騒音

おおむね80DBを超える騒音に頻度、そのばく露時間・期間・防音保護具の着用の状況等

※長期間の過重業務の判断に当たっては、付加的に評価

ウ 長期間の過重業務について

(ア) 疲労の蓄積の考え方

恒常的な長時間労働等の負荷が長期間にわたって作用した場合には、「疲労の蓄積」が生じ、これが血管病変等をその自然経過を超えて著しく増悪させ、その結果、脳・心臓疾患を発症させることがある。

このことから、発症との関連性において、業務の過重性を評価するに当たっては、発症時における疲労の蓄積がどの程度であったかという観点から判断することとする。

(イ) 評価期間

発症前おおむね6か月間

(ウ) 過重負荷の有無の判断

著しい疲労の蓄積をもたらす特に過重な業務に就労したと認められるか否かについては、業務量、業務内容、作業環境等を考慮し、同僚等にとっても、特に過重な身体的、精神的負荷と認められるか否かという観点から、客観的かつ総合的に判断すること。

具体的には、労働時間のほか前記イの(ウ)のb~gまでに示した負荷要因について十分検討すること。

その際、疲労の蓄積をもたらす最も重要な要因と考えられる労働時間に着目すると、その時間が長いほど、業務の過重性が増すところであり、具体的には、発症日を起点とした1か月単位の連続した期間をみて、

① 発症前1か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね45時問を超える時間外
労働が認められない場合は、業務と発症との関連性が弱いが、おおむね45時間を超えて時間外労働時間が長くなるほど、業務と発症との関連性が徐々に強まると評価できること

② 発症前1か月間におおむね100時間又は発症前2か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いと評価できること。

以上を踏まえて判断すること

ここでいう「時間外労働時間数」は、1週間当り40時間を超えて労働した時間数である。

脳・心臓疾患発症前の身体の状況

脳・心臓疾患の発症には、高血圧、飲酒、喫煙、高脂血症、肥満、糖尿病等のリスクファクターの関与が指摘されています。

特に、複数のリスクファクターを有する者は、発症のリスクが極めて高いとされているので、労働基準監督署は、発症前の健康状態を確認して認定業務にあたっています。

労働基準監督署は、勤務先の会社の定期健康診断結果の提出を求めます。

また、脳・心臓疾患を発症した本人または関係者から過去の入院・通院歴の状況等を確認されます。そして、協会けんぽ等のレセプトも過去5年ほどに渡って照会されることになります。

既に病院にかかっている場合は、リスクファクターと基礎疾患の状態・程度を把握するために、治療担当医に医療照会がなされます。

脳の損傷(高次脳機能障害)による後遺障害の障害等級の認定

ア  高次脳機能障害

高次脳機能障害については、意思疎通能力、問題解決能力、作業負荷に対する持続力・持久力及び社会行動能力の4つの能力(以下「4能力」という。)の各々の喪失の程度に着目し、評価を行うこと。その際、複数の障害が認められるときには、原則として障害の程度の最も重篤なものに着目して評価を行うこと。

たとえば、意思疎通能力について第5級相当の障害、問題解決能力について第7級相当の障害、社会行動能力について第9級相当の障害が認められる場合には、最も重篤な意思疎通能力の障害に着目し、第5級の1の2として認定すること。

ただし、高次脳機能障害による障害が第3級以上に該当する場合には、介護の要否及び程度を踏まえて認定すること。

また、以下に掲げた高次脳機能障害に関する障害の程度別の例は例示の一部であり、認定基準に示されたもの以外の4能力の喪失の程度別の例については、別添2「神経系統の機能又は精神の障害に関する医学的事項等」(以下「別添2」という。)の別紙「高次脳機能障害整理表」を参考にすること。

なお、高次脳機能障害は、脳の器質的病変に基づくものであることから、MRI、CT等によりその存在が認められることが必要であること。

また、神経心理学的な各種テストの結果のみをもって高次脳機能障害が認められないと判断することなく、4能力の障害の程度により障害等級を認定すること。

高次脳機能障害 1級

(ア) 「高次脳機能障害のため、生命維持に必要な身のまわり処理の動作について、常に他人の介護を要するもの」は、第1級の3とする。

以下のa又はbが該当する。

a  重篤な高次脳機能障害のため、食事・入浴・用便・更衣等に常時介護を要するもの

b  高次脳機能障害による高度の痴ほうや情意の荒廃があるため、常時監視を要するもの

1級、2級、3級、5級、7級、9級、12級、14級
神経系統の機能又は精神の障害に関する障害等級認定基準(厚生労働省労働基準局長 基発第0808002号 平成15年8月8日通達から引用)

高次脳機能障害 2級

(イ) 「高次脳機能障害のため、生命維持に必要な身のまわり処理の動作について、随時介護を要するもの」は、第2級の2の2とする。

以下のa、b又はcが該当する。

a  重篤な高次脳機能障害のため、食事・入浴・用便・更衣等に随時介護を要するもの

b  高次脳機能障害による痴ほう、情意の障害、幻覚、妄想、頻回の発作性意識障害等のため随時他人による監視を必要とするもの

c  重篤な高次脳機能障害のため自宅内の日常生活動作は一応できるが、1人で外出することなどが困難であり、外出の際には他人の介護を必要とするため、随時他人の介護を必要とするもの

神経系統の機能又は精神の障害に関する障害等級認定基準(厚生労働省労働基準局長 基発第0808002号 平成15年8月8日通達から引用)

高次脳機能障害 3級

(ウ) 「生命維持に必要な身のまわり処理の動作は可能であるが、高次脳機能障害のため、労務に服することができないもの」は、第3級の3とする。

以下のa又はbが該当する。

a  4能力のいずれか1つ以上の能力が全部失われているもの

例1   意思疎通能力が全部失われた例

職場で他の人と意思疎通を図ることができない」場合

2 問題解決能力が全部失われた例

「課題を与えられても手順とおりに仕事を全く進めることができず、働くことができない」場合

3 作業負荷に対する持続力・持久力が全部失われた例

「作業に取り組んでもその作業への集中を持続することができず、すぐにその作業を投げ出してしまい、働くことができない」場合

4 社会行動能力が全部失われた例

「大した理由もなく突然感情を爆発させ、職場で働くことができない」場合

b  4能力のいずれか2つ以上の能力の大部分が失われているもの

神経系統の機能又は精神の障害に関する障害等級認定基準(厚生労働省労働基準局長 基発第0808002号 平成15年8月8日通達から引用)

高次脳機能障害 5級

(エ) 「高次脳機能障害のため、きわめて軽易な労務のほか服することができないもの」は、第5級の1の2とする。

以下のa又はbが該当する。

a  4能力のいずれか1つ以上の能力の大部分が失われているもの

問題解決能力の大部分が失われている例

「1人で手順とおりに作業を行うことは著しく困難であり、ひんぱんな指示がなければ対処できない」場合

b  4能力のいずれか2つ以上の能力の半分程度が失われているもの

神経系統の機能又は精神の障害に関する障害等級認定基準(厚生労働省労働基準局長 基発第0808002号 平成15年8月8日通達から引用)

高次脳機能障害 7級

(オ) 「高次脳機能障害のため、軽易な労務にしか服することができないもの」は、第7級の3とする。

以下のa又はbが該当する。

a  4能力のいずれか1つ以上の能力の半分程度が失われているもの
問題解決能力の半分程度が失われているものの例
「1人で手順とおりに作業を行うことに困難を生じることがあり、時々助言を必要とする」場合

b  4能力のいずれか2つ以上の能力の相当程度が失われているもの
神経系統の機能又は精神の障害に関する障害等級認定基準(厚生労働省労働基準局長 基発第0808002号 平成15年8月8日通達から引用)

高次脳機能障害 9級

(カ) 「通常の労務に服することはできるが、高次脳機能障害のため、社会通念上、その就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの」は、第9級の7の2とする。

高次脳機能障害のため4能力のいずれか1つ以上の能力の相当程度が失われているものが該当する。

問題解決能力の相当程度が失われているものの例

「1人で手順とおりに作業を行うことに困難を生じることがあり、たまには助言を必要とする」場合

神経系統の機能又は精神の障害に関する障害等級認定基準(厚生労働省労働基準局長 基発第0808002号 平成15年8月8日通達から引用)

高次脳機能障害 12級

(キ) 「通常の労務に服することはできるが、高次脳機能障害のため、多少の障害を残すもの」は、第12級の12とする。

4能力のいずれか1つ以上の能力が多少失われているものが該当する。
神経系統の機能又は精神の障害に関する障害等級認定基準(厚生労働省労働基準局長 基発第0808002号 平成15年8月8日通達から引用)

高次脳機能障害 14級

(ク) 「通常の労務に服することはできるが、高次脳機能障害のため、軽微な障害を残すもの」は、第14級の9とする。

MRI、CT等による他覚的所見は認められないものの、脳損傷のあることが医学的にみて合理的に推測でき、高次脳機能障害のためわずかな能力喪失が認められるものが該当する。

神経系統の機能又は精神の障害に関する障害等級認定基準(厚生労働省労働基準局長 基発第0808002号 平成15年8月8日通達から引用)

労働時間の記録から始めよう

残業代は、残業時間数に応じて支払われるべきものですから、会社の都合で固定された時間以上は支給しないという取り扱いは許されません。

厚生労働省は、労働時間を事業者が適正に把握していないことが、長時間労働に起因した過労死の背景にあると分析しています。

また、平成12年11月30日の中央労働基準審議会では、サービス残業の解消対策が必要との建議が出されました。

これらを背景として、平成13年4月6日に、厚生労働省は、「労働時間の適正な把握のために使用者が構ずべき措置に関する基準」という通達を出しました。(基発台339号)。

この通達は、労働時間の適正な把握のため会社の義務として、労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、これを記録することを定めています。

また、この労働時間の確認方法は、原則として、会社が自ら記録するか(使用者の現認)、タイムカードなどの客観的な記録を基礎として確認し、記録することとされています。

やむを得ず労働時間の記録について、自己申告制をとる場合についても、会社は従業員に十分な説明を行い、必要に応じて申告と労働時間の実態について実態調査を行わなければなりませんし、適正な労働時間の申告を阻害する目的で時間外労働時間数の上限を設定するなどの措置を講じることは禁じられています。

さらに、労働時間の記録に関する書類(タイムカードや残業命令書等)の保管については、労基法109条の3年の保存期間が適用されます。

適正な残業時間の申告を妨害する目的で固定された時間の残業打切りを定めている場合は、この通達に違反していることを理由として、労働基準監督署から、会社に対して、タイムカードの導入・残業打切り制度の廃止を指導・勧告してもらうよう、要求することができます。

当面の対応としては、実際の労働時間を、手帳などにメモして、記録として残しておくことが、労働基準監督署に相談する上でも重要です。

労災保険の給付、審査請求、再審査請求について社会保険労務士として支援いたします。

長時間労働による脳梗塞につきましては、一度はお気軽に当事務所までお問い合わせください。

違法なサービス残業を是正させるには次のやり方があります

1.労働行政の機関としての労働基準監督署に指導・監督を求める申告(労働者本人が行うもの)・通告(それ以外の第三者が行うもの)

2.司法警察員としての労働基準監督署に刑事事件として捜査・送検を求める告訴(労働者本人が行うもの)・告発(それ以外の第三者が行うもの)

3.労働者本人がサービス残業代を請求する民事訴訟

サービス残業の是正そのものに主眼を置く場合は、第三者として通告を行うのが効果的です。それが過労死の予防に大いに役立ちます。

もしご主人にも知られたくない場合や、反対された場合は、匿名で通告することもできます。

労働基準監督署の担当者に事情を話せば、あなたが通告したことをご主人や会社に知られないようにも配慮しながら調査・指導をしてくれます。

もちろん、その場合でも、労働時間に関する資料や情報の提供など、労働基準監督署に対してできる限り協力することが必要です。

労働時間の把握方法

申請者側で用意できるものがあれば、そろえていきましょう。

用意できない場合は、労働基準監督署に申立をしていきましょう。

参考までにどのようなものが考えれるか列挙してみました。

1 タイムカード

2 ICカード、IDカード

3 パソコンのログデータ

ログイン、ログアウトの時間

4 メールやチャット、LINEなどの送信記録

5 タコグラフ

6 グループウェアの記録

7 会社や店舗の警備記録、入退記録

8 日報

9 本人の手帳

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