トラック運転者の「改善基準告示」の改正 令和6年4月より
文責 社会保険労務士 松井 宝史 2023.04.02
トラック運転者の「改善基準告示」の改正 令和6年4月より改正されます
改善基準告示とは、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(厚生労働大臣告示)のことを言い、自動車運転者の長時間労働を防ぐことは、労働者自身の健康確保のみならず、国民の安全確保の観点からも重要であることから、トラック、バス、ハイヤー・タクシー等の自動車運転者について、労働時間等の労働条件の向上を図るため拘束時間の上限、休息期間について基準等が設けられています。
しかしながら、脳・心臓疾患による労災支給決定件数において、運輸業・郵便業が全業種において最も支給決定件数の多い業種(令和3年度:59件(うち死亡の件数は22件))となるなど、依然として長時間・過重労働が課題となっています。
また、自動車運転者の過重労働を防ぐことは、労働者自身の健康確保のみならず、国民の安全確保の観点からも重要です。
改善基準告示は、法定労働時間の段階的な短縮を踏まえて見直しが行われた平成9年以降、改正は行われていませんでしたが、令和4年12月に自動車運転者の健康確保等の観点により見直しが行われ、拘束時間の上限や休息期間等が改正されました(令和6年4月1日施行)。
トラック運転者の「改善基準告示」の改正内容
☆1年、1か月の拘束時間
1年:3,300時間 1か月:284時間
例外:労使協定により、次のとおり延長可能です。但し①②を満たす必要があります。
1年:3,400時間 1か月:310時間(年6か月まで)
284時間超は連続3か月まで
1か月の時間外・休日労働時間が100時間未満になるよう努める
☆1日の拘束時間
13時間以内(上限15時間、14時間超は週2回までが目安)
例外:宿泊を伴う長距離貨物運送の場合、16時間まで延長可(週2回まで)
1週間における運行がすべて長距離貨物運送(一の運行の走行距離が450㎞以上の貨物運送)で、一の運行における休息期間が住所地以外の場所におけるものである場合
☆1日の休息時間
継続11時間以上与えるよう努めることを基本とし、9時間を下回らない
例外:宿泊を伴う長距離運送の場合、継続8時間以上(週2回まで)
休息期間のいずれかが9時間を下回る場合は、運行終了後に継続12時間以上の休息期間を与える
☆運転時間
2日平均1日:9時間以内 2週平均1週:44時間以内
☆連続運転時間
4時間以内
運転の中断時には、原則として休息を与える(1回おおむね連続10分以上、合計30分以上)
10分未満の運転の中断は、3回以上連続しない
例外:SA・PA等に駐停車できないことにより、やむを得ず4時間を超える場合、4時間30分まで延長可
☆予期し得ない事象
予期し得ない事象への対応期間を、1日の拘束時間、運転時間(2日平均)、連続運転時間から除くことができる。
勤務終了後、通常どおりの休息期間(連続11時間以上を基本、9時間を下回らない)を与える
※予期し得ない事象とは、次の事象をいう。
・運転中に乗務している車両が予期せず故障したこと
・運転中に予期せず乗船予定のフォリーが欠航したこと
・運転中に災害や事故の発生に伴い、道路が封鎖されたこと又は道路が渋滞したこと
・異常気象(警報発表時)に遭遇し、運転中に正常な運行が困難となったこと
※運転日報上の記録に加え、客観的な記録(公的機関のHP情報等)が必要
☆特例
- 分割休息(連続9時間の休息期間を与えることが困難な場合)
・分割休息は1回3時間以上
・休息期間の合計は、2分割:10時間以上、3分割:12時間以上
・3分割が連続しないように努める
・一定期間(1か月程度)における全勤務回数の2分の1が限度
- 2人乗務(自動車運転者が同時に1台の自動車に2人以上勤務する場合)
身体を伸ばして休息できる設備がある場合、拘束時間を20時間まで延長し、休息期間を4時間まで短縮可
例外:設備(車両内のベッド)が長さ198cm以上、かつ、幅80cm以上の連続した平面であり、かつ、クッション材等により走行中の路面等からの衝撃が緩和されるものであることの要件をみたす場合、次のとおり、拘束時間をされに延長可
・拘束時間を24時間まで延長可(ただし、運行終了後、連続11時間以上の休息時間を与えることが必要)
・さらに、8時間以上の仮眠時間を与える場合、拘束時間を28時間まで延長可
- 隔日勤務(業務の必要上やむを得ない場合)
2暦日の拘束時間は21時間、休息期間は20時間
例外:仮眠施設で夜間4時間以上の仮眠を与える場合、2暦日の拘束時間を24時間まで延長可(2週間に3回まで)
2週間の拘束時間は126時間(21時間×6勤務)を超えることができない
- フェリー
・フェリー乗船時間は、原則として休息期間(減算後の休息期間は、フェリー下船時刻から勤務終了時刻までの間の時間の2分の1を下回らない)
・フェリー乗船時間が8時間を超える場合、原則としてフェリー下船時刻から次の勤務が開始される
☆休日労働
休日労働は2週間に1回を超えない、休日労働によって拘束時間の上限を超えない。
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担当:社会保険労務士 宮本 麻由美