労災保険と交通事故
文責 社会保険労務士 松井 宝史 2020.07.30
業務中や通勤中に生じた交通事故の場合は、労災保険に対して医療費を請求することができます。
相手がある事故の場合には、被害者は加害者に対して二つの権利を有することになります。
それは、損害賠償権と労災保険への給付請求権です。二つの権利のうちどちらを行使するかについては、被害者自身が選択できます。
この場合、加害者と労災保険の両者から二重に補償を受けることを調整する必要があります。
そのため、第三者行為災害に関する労災保険給付と民事損害賠償との支給調整について、労災保険法で定められています。
具体的には次のようになっています。
労災保険を先行で使用した場合:労災保険側が相手に請求します。
加害者からの損害賠償を先行で受けた場合:労災保険からの支払いが損害賠償額の範囲内で減額されます。
交通事故で労災保険を使うメリット
通勤途中や業務中に起きた事故の場合、労災保険を使うと次のようなメリットがあります。
1. 健康保険と比較して補償の範囲が幅広い。
2. 医療費が100%給付され、個人負担がない。
3. 特別支給金制度があり、またこれは民事上の賠償とは支給調整されない。
労災保険には慰謝料や雑費の給付がなく、また自賠責支給を先行すると、仮渡金制度や任意一括制度を利用することができます。
そのため、結果的に損害賠償額がスピーディーに支払われるというメリットがあります。
ただし、次の点には注意が必要です。
それは、加害者が任意保険に加入している場合のことです。
この場合でも、過失割合や保険会社の支払いについては保険会社が決めた範囲内で行われます。
そのため、労災保険の認定を受けておくことが肝心です。
このような方は当事務所に是非御相談ください
通勤災害・業務災害(以後通勤災害等)でお怪我をしたが、現在相手の任意保険で治療されている方。
通勤災害等で労災保険を使って治療をしたいが、会社から申請を断られた方。
通勤災害等でお怪我したが、保険会社が健康保険を使って治療して欲しいとお願いされた方。
事故後会社を退職したので、以前の会社に申請を言えない方。
労災保険での申請は手間が掛る為に、会社に迷惑をかけたくないと思っている方。
事故が通勤途中かどうか迷っている方。
通勤災害等の事故で、自賠責保険から後遺障害等級を認めて頂いたが、労災の障害特別支給金の申請がまだされていない方。
無料相談コーナー(2日以内の回答を心がけています。)
当事務所に依頼されることの利点
当事務所は通勤災害等を全国対応で専門にしています。
障害認定には労働基準監督署に出来る限り同行しています。
社会保険労務士が4名いますので、退職後の事などのアドバイスができます。
障害年金申請もプロがいますので、障害厚生年金・障害基礎年金に該当するかどうかをアドバイスできます。
会社に言えない方は、当事務所から会社の総務のご担当者様にご説明させて頂きます。
何か些細なことでも悩まれる事は、ご連絡頂ければ対応させて頂いています。
病院が遠いために、申請書の記入を持参できない場合は、当事務所から病院にお願いして対応しております。
会社に申請の迷惑をかけることがなくなります。
無料相談コーナー(2日以内の回答を心がけています。)
交通事故にてお怪我された場合の流れ
1. 通勤途中・業務中・私用中の事故なのかを把握します。
2. 通勤途中・業務中の事故であれば、過失の有無にかかわりなくなるべく労災保険にての治療をお勧めします。
私用中の場合であれば、健康保険を使っての治療をお勧めします。
治療の点数
自賠責保険使用の場合・・・・1点につき20円以上
労災(公務)保険使用の場合・1点につき12円
健康保険使用の場合・・・・・1点につき10円
3. 上記のどの保険を使って治療するかを、保険会社(相手又は自分)に連絡します。
4. 保険会社が病院と連絡をして調整してくれます。
5. 手続きに関しては、
健康保険使用の場合は、自分の加入の協会けんぽ、健康保険組合に連絡するか、会社の総務担当者に連絡する。
労災保険使用の場合は、会社の人事課に連絡するか又は、専門家(社会保険労務士など)にお願いする。
自賠責保険の場合は、相手側(又は自分の)保険会社が手続きをしてくれます。
6. 治療に専念して頂き、事故から6カ月経過して痛み・痺れなどが残っているようでしたら、後遺障害申請の手続きをします。
7. 後遺障害が残らない場合は、保険会社に連絡し、示談金額の提示を受けて頂きます。
8. 後遺障害が残った場合は、自賠責保険後遺障害診断書の用紙を保険会社に頂き、病院の先生に証明して頂きます。
9. 8.の用紙を記入頂きましたら、任意保険会に提出します。
10. 任意保険会社は、自賠責の調査事務所に提出します。
11. 自賠責の調査事務所に提出して、約2カ月くらいで後遺障害認定決定通知票が任意保険会社経由にて送られてきます。
労災保険の障害給付の申請も同時に行います。
愛知労務に連絡いただければ、申請の代行をやっております。
そのための書類の作成も同時に行います。(第三者行為災害届、障害給付申請書作成など)
また併せて、労働基準監督署の担当官と連絡を取って、必要な書類(賃金台帳やタイムカードなど)を手配します。
障害認定の時は、社会保険労務士1名が立ち合いをして、労働基準監督署の担当官にお怪我をした方の症状などを書面や口頭で説明をします。
その方が、障害等級が認定される確率や重い等級が認定される確率が上がります。
12. 後遺障害認定に不満があれば、異議申し立てを行います。
労災保険の障害給付の認定に不満があれば、審査請求を行います。
後遺障害等級に不満が無ければ、保険会社に連絡し、示談金額の提示を受けます。
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頚椎捻挫で障害等級14級認定事例
Y様(50歳代男性)
Y様は、以前当事務所で通勤災害のお手伝いをさせていただいたお客様(N様)からのご紹介でご相談にみえました。
事故から6ヶ月治療をして症状固定となり、後遺障害の申請をしたが「非該当」という結果になってしまったとのことでした。
また、N様が通勤災害に遭われたとき、労災保険の休業特別支給金、障害特別支給金等の申請を私共でお手伝いさせて頂いており、Y様からもそのご依頼を頂きました。
労災保険については愛知労務の方で、「第三者行為災害届」、「休業特別支給金支給申請書」、「障害特別支給金支給申請書」の書類作成をお手伝いさせて頂きました。
Y様のお勤め先の会社とも連絡をとりながら完成させました。
自賠責保険の異議申立の結果も本人が申請してから2ヶ月ほどで出てきました。
MRIの異常所見もありましたので、14級獲得という嬉しい結果となりました。
労働基準監督署には、労災保険の書類一式が揃いましたので提出をしていきました。
その間に、民事上の賠償金の額も決定し、事前に労働基準監督署の許可を受けてから示談となりました。
その後、1ヶ月ほどしてから労働基準監督署の等級認定の出頭があり、私も立会いをさせていただきました。
労災保険についても14級が獲得できました。
労災保険の給付としては次のような給付がありました。
休業特別支給金 約40万円
障害特別支給金 8万円
ボーナス特別支給金 約 8万円
頭頸部外傷症候群等(むちうち症など)に係るアフターケア
頭頸部外傷症候群(むちうち症)などの方で、治った後においても神経に障害を残す場合は、季節、天候、社会環境などの変化に伴って症状が悪化したりすることがあるため、保健指導、薬剤の支給、検査などを受けることができます。
アフターケアの対象者は、以下の条件に該当する方となります。
1. 頭頸部外傷症候群、頸肩腕障害(首から肩、上肢に発生する痛みやしびれなどの症状の総称)、腰痛のどれかの傷病が治った後、神経の障害が残った方
2. 労災保険から障害等級第9級以上の障害(補償)給付を受けていて(または受けると見込まれ)、医学的に早期にアフターケアの実施が必要と認められる、または障害等級第10級以下の障害(補償)給付を受けていて、医学的に特に必要と認められる方
アフターケアの健康管理手帳の申請は、治った日の翌日から起算して2年以内に行う必要があります。
また、健康管理手帳の有効期間は、交付日から起算して2年間となっており、更新は出来ません。
むちうち症などで労災保険の障害給付の申請をして、9級以上ならばほぼ原則認められることとなり、10級~14級の方は、医学的に特に必要と認められる場合はアフターケアが受けられることとなります。
措置範囲
(1) 診察・・・原則として1か月に1回程度
(2) 保健指導・・・診察の都度
(3) 保健のための処置(薬剤の支給)
① 神経系機能賦活薬
② 向精神薬
頭頸部外傷症候群に限ります。
③ 筋弛緩薬
④ 鎮痛・消炎薬(外用薬を含みます。)
⑤ 循環改善薬(鎮暈薬、血管拡張薬及び昇圧薬を含みます。)
血液の循環の改善を必要とするものに対して必要に応じて支給するものです。
(4) 検査
エックス線検査各傷病について必要と認められる部位について、1年に1回程度
○ 健康管理手帳の有効期間・・・交付日から起算して2年間とします。
上記内容については、厚生労働省アフターケア制度のご案内より引用しました。
関連ページ:
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