労災保険給付の種類 通勤途中の交通事故 労災保険申請

労災保険給付の種類(療養給付、休業給付、障害給付、遺族給付)

文責 社会保険労務士 松井 宝史 2020.02.2

通勤途中に交通事故に遭った場合

労災保険の保険給付は、保険事故の種類に応じて次の2つに大別されます。

1・業務災害(業務上の負傷、疾病、障害または死亡)に関する保険給付
2・通勤災害(通勤による負傷、疾病、障害または死亡)に関する保険給付

業務災害とは、労働者が業務を原因として被った負傷、疾病または死亡(以下「傷病等)をいいます。 業務と傷病等との聞に一定の因果関係があることを「業務上」と呼んでいます。
業務災害に対する保険給付は、労働者が労災保険の適用される事業場に雇われて、事業主の支配下にあるときに、業務が原因となって発生した災害に対して行われます。

目次

事業主の支配・管理下で業務に従事している場合

通勤災害について

療養補償給付

休業補償給付

傷病補償年金

障害補償給付

遺族補償給付

葬祭料(葬祭給付)

介護補償給付(介護給付)

通勤災害に関する給付

未支給の保険給付

他の公的年金との調整

 

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事業主の支配・管理下で業務に従事している場合

この場合の災害は、被災した労働者の業務としての行為や事業場の施設・設備の管理状況などが原因となって発生するものと考えられるので、特段の事情がない限り、業務災害と認められます。

通勤災害について

通勤災害とは、通勤によって労働者が被った傷病等をいいます。


この場合の「通勤」とは、就業に闘し、住居と就農の場所との聞の往復就業の場所から他の就業の場所への移動単身赴任先住居と帰省先住居との聞の移動を、合理的な経路および方法で行うことをいい、業務の性質を有するものを除くとされています。


移動の経路を逸脱し、または中断した場合には、逸脱または中断の間およびその後の移動は「通勤」とはなりません。


ただし、例外的に認められた行為で逸脱または中断した場合には、その後の移動は「通勤」となります。

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業務災害及び通勤災害に関する保険給付は、次の7種類です

療養補償給付

(1) 療養補償給付…労働災害により損失した労働者の稼得能力の回復。いわゆる病院への治療費です。


療養補償給付は、労働基準法第75条に規定する災害補償の事由が生じた場合に、補償を受けるべき労働者に対し、その請求に基づいて行います。


仕事または通勤が原因で負傷したり病気になった場合、労災病院や労災指定医療機関において、原則として無料で治療を受けることができます。


その際、指定医療機関に療養の給付請求書を提出することになります。


やむを得ず指定医療機関以外で治療を受けた場合には、いったん治療費を負担していただきます。

 

その後で、療養の費用の支給請求書を労働基準監督署に提出することによって、負担した費用の全額が支給されます。


通院するための交通費についても、一定の要件を満たせば全額が支給されます。


☆ 給付の内容
(1) 給付の範囲は、次のうち政府が必要と認められるものとなります。


ア・診察
イ・薬剤または治療材料の支給
ウ・処置、手術その他の治療
エ・居宅における療養上の管理及びその療養に伴う世話その他の看護
オ・病院または診療所への入院及びその療養に伴う世話その他の看護
カ・移送


(2) 給付の期間は、療養の必要が生じたときから療養の必要の存する全期間について行われます。


(3)これらの療養は、指定病院等において行われます。


(4)療養の費用の支給
指定病院等以外の病院、診療所又は薬局において診療等を受けた場合又は特別な看護、移送の費用等について、その費用を現金で償還する制度です。


療養の費用の支給は、療養の給付の補完的なものです。


(5)指定病院等
指定病院等は、次の病院をいいます。
①社会復帰促進等事業として設置された病院・診療所(労災病院)
②都道府県労働局長の指定する病院・診療所、薬局、訪問看護事業者
いったん治癒した後再発した場合についても同様です。


給付の期間は、1年や2年などのように制限されていることはなく、労働者が退職した後も支給されます。

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休業補償給付はここを参照してください。

傷病補償年金

(3)傷病補償年金は、業務上負傷し、または疾病にかかった労働者が、当該負傷または疾病に係る療養の開始後1年6か月を経過した日において次の各号のいずれにも該当するとき、又は同日後次の各号のいずれにも該当することとなったときに、その状態が継続している間、当該労働者に対して支給されます。


(1) 当該負傷または疾病が治っていないこと
(2) 当該負傷または疾病による障害の程度が省令で定める傷病等級に該当すること


☆ 傷病等級
第1級…傷病による障害の状態が常時介護を要する状態
第2級…傷病による障害の状態が随時介護を要する状態
第3級…傷病による障害の状態が常態として労働不能の状態


☆ 給付の内容
第1級…給付基礎日額の313日分
第2級…給付基礎日額の277日分
第3級…給付基礎日額の245日分

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葬祭料(葬祭給付)


(6)葬祭料は、労働者が業務上死亡した場合に、葬祭を行う者に対し、その請求に基づいて行います。
葬祭給付は、通勤災害で死亡した場合に、葬祭を行う者に対し、その請求に基づいて行います。
葬祭料(葬祭給付)の額は、次のうち高い方の額となります。
(1) 305,000円と給付基礎日額の30日分との合計額
(2) 給付基礎日額の60日分

通勤災害に関する給付

通勤災害に関する保険給付の内容は、業務災害に関する保険給付の内容とほぼ同一です。
療養給付については、療養補償給付と同様の支給事由、支給対象者、給付の種類、給付内容、請求手続が定められています。
休業給付については、休業補償給付と同様の支給事由、支給対象者、給付の内容、請求手続が定められています。
傷病給付については、傷病補償給付と同様の支給事由、支給対象者、給付の内容、給付決定手続、傷疾等級の変更方式が定められています。
障害給付については、障害補償給付と同様の支給事由、支給対象者、給付の種類、給付の内容、請求手続、傷害等級の変更手続が定められています。
遺族給付については、遺族補償給付と同様の支給事由、支給対象者、給付の種類、給付の内容、請求手続が定められています。
葬祭給付については、葬祭料と同様の支給事由、支給対象者、給付の内容、請求手続が定められています。
介護給付については、介護補償給付と同様の支給事由、支給対象者、給付の内容、請求手続が定められています。

未支給の保険給付


労災保険の保険給付は、受給権者に支給されるのが原則ですが、受給権者が保険給付の請求をせず、または請求したが保険給付を受けないうちに死亡したときには、その保険給付(未支給の保険給付)の受給権の帰属が問題となります。

通常の財産権は、民法による相続の規定によりますが、労災保険の保険給付は、労働者の稼得能力の損失のてん補を趣旨としていますので、労働者の稼得によって生活する者の保護を優先するために、民法の相続規定に対する特例が設けられています。
☆ 支給対象者
(1) 支給給付の資格を有する者
イ. 遺族(補償)年金の場合
受給権者が死亡したことにより、新たに受給権者となることができる者が、支給請求の資格を有します。
ロ. 遺族(補償)年金以外の場合
受給権を有する者の死亡の当時、その者と生計を同じくしていた次の者が支給請求の資格を有します。
a. 配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあった者)
b. 子
c. 父母
d. 孫
e. 祖父母
f. 兄弟姉妹
(2) 請求権者
支給請求の資格を有する者は以上のとおりですが、実際に請求でいる者は次の通りです。
イ. 遺族(補償)年金の場合
遺族(補償)年金を受けることのできる受給権が発生する順位における再選順位者が、請求権者となります。
ロ. 遺族(補償)年金以外の場合
前記ロのaからfまでに掲げた順位における再先順位者が、請求権者となります。

他の公的年金との調整

同一の事由による傷害や死亡が原因で、労災保険の年金給付と厚生年金保険及び国民年金の年金給付が支給される場合は、その種類に応じて、労災保険の年金給付額に次の表の率を乗じて減額し、調整することとなります。
原則は、社会保険の年金給付は全額支給され、労災保険の年金給付の額は、下の表の率を乗じた額となります。

支給調整率

 

厚生年金保険及び国民年金

厚生年金保険

国民年金

障害補償年金
傷害年金
障害厚生年金及び傷害基礎年金 0.73 障害厚生年金 0.83 障害基礎年金 0.88
遺族補償年金
遺族年金
遺族厚生年金及び遺族年金もしくは寡婦年金 0.80 遺族厚生年金 0.84 遺族基礎年金又は寡婦年金 0.88
傷疾補償年金
傷疾年金
休業補償給付
休業給付
障害厚生年金及び障害基礎年金 0.73 障害厚生年金 0.86 障害基礎年金 0.88

労災保険の年金給付と他の社会保険の年金給付との調整は、同一の事由に限り行われますので、老齢厚生年金、老齢基礎年金の受給権者に対して、このような減額調整は行われません。

労災特別支給金の種類