労災申請のメリットについて解説
文責 社会保険労務士 松井 宝史 最終更新日:2021.07.11
労災申請のメリットを5つご説明します
交通事故が労災だった(通勤災害も含む)場合、労災申請するメリットは何でしょうか?
長年(平成15年4月から)交通事故の労災申請を手掛けている社会保険労務士が解説をしてみます。
1.特別支給金がもらえる
民事上の賠償金とは調整されずに、特別支給金がもらえます。
例えば、休業が発生した場合は、相手の自動車保険で休業補償を100%もらっても、さらに20%休業特別支給金がもらえます。
日額が10,000円の人が、1年(365日)休んだ場合は、
10,000円×20%×365日=730,000円もらえることになります。
障害が残った場合は、相手の自動車保険で後遺障害逸失利益、後遺障害慰謝料をもらって、さらに等級に応じて障害特別支給金がもらえます。
これは等級に応じて定額です。
例えば、1級の人は、342万円、14級の人は8万円です。
事故の前年にボーナスをもらっていた人には、いわゆるボーナス特別支給金がもらえます。
障害特別年金、障害特別一時金です。
遺族の方には、遺族特別年金、遺族特別一時金、重い傷病を負った人には、傷病特別年金がもらえます。
そんな制度があるのを誰も教えてくれなかったよ、といわれる人には、今からでも申請できることがあります。
労災保険給付の受給権についての消滅時効
休業(補償)給付 2年・・・労務不能により賃金を受けられない日ごとにその翌日
障害(補償)給付 5年・・・傷病が治った日の翌日(事故に遭った日からではありません)
遺族(補償)給付 5年・・・労働者が死亡した日の翌日
2.アフターケア制度が使えます
アフターケアを申請して、認定されると症状固定後でも、原則、月に1回程度、診察、投薬等が受けられます。
アフターケアの目的は、そのケガや病気が治った後も、再発や後遺障害に伴う新たな病気の発症を防ぐため、診察、保健指導、保健のための処置、検査等を行い、円滑な社会生活を営めるようにすることです。
アフターケアの対象となるケガや病気は、脊髄損傷、脳の器質性障害、外傷による末梢神経損傷など20種類あり、一定の障害等級に認定された方です。
申請をしないとアフターケア制度は使えません。
3.義肢等補装具の支給制度が使えます
仕事中や通勤途中で、ケガや病気になり、そのために体の一部を失ったり、障害が残った方に対して、義肢等補装具の購入や修理費用が申請をしてもらえます。
また、義肢や補装具の採型、装着訓練のために医療機関へ行くための交通費ももらえます。
義肢等補装具の支給項目は、義肢、義眼、車椅子、電動車椅子など24項目あります。
4.過失割合は関係ない
労災保険は、被災者救済を目的としているので過失割合・過失相殺という考え方はありません。
例えば、狭い道路から優先道路に出て行って衝突事故にあっても、労災保険の給付は減額されることはありません。
狭い道路から出た人をAさん、優先道路を走っていた人をBさんとします。
AさんとBさんの過失割合は、それぞれ85%・15%だったとして、労災保険と民事損害賠償について考えてみます。
Aさんは、自身の損害額の15%しか損害賠償を受けられません。
しかし、労災保険には過失相殺の考え方がないので、Aさんは、自身の治療費を100%、また休業損害を約80%労災保険で補償してもらえます。
断然、労災保険を利用した方が、メリットありますね。
5.後遺症が重い場合、一定期間を過ぎると民事上の賠償と調整されない
交通事故の後遺症が重い場合、1級から7級までは、労災保険は年金となります。
民事上の損害賠償と労災保険の年金は、一定期間支給調整がかかりますが、それを過ぎるとまるまるもらえるようになります。
絶対に申請をしてください。
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〇参考リンク
厚生労働省「『アフターケア』制度のご案内」
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