通勤途中の交通事故の労災特別支給金の種類
文責 社会保険労務士 松井 宝史 最終更新日:2020.02.05
特別支給金の種類は次のとおりです。
1・一般の特別支給金
これは、保険給付が労働者の損失した稼得能力の回復ないしてん補を目的とするものであるのに対し、療養生活の援護、生活転換の援護、弔慰、見舞等、稼得能力の損失のてん補以外の多角的な目的から支給されるものです。
(1)休業特別支給金
支給要件
労働者が、業務上の事由又は通勤による傷病に係る療養のため、労働することができないために賃金を受けない日の第4日目から、当該労働者に対して、その申請に基づいて支給されます。
また民事上の賠償金とは調整されませんので、認定されれば給付されます。
支給額
支給額は、1日につき休業給付基礎日額の100分の20に相当する額です。
通勤途中の交通事故などで相手側の保険で休業損害を100%もらっていた場合でも、休業特別支給金が請求できます。時効は、2年ですので早めに請求をしてください。
例えば、休業基礎日額が10,000円で180日(約6か月)休んだ場合は、10,000円×20%×180日=360,000円が支給されます。
請求忘れにご注意ください。
(2)障害特別支給金
支給要件
労働者が、業務上の事由又は通勤による傷病が治った時に身体に障害を残した場合に、当該労働者に対し、その申請に基づいて支給されます。
また民事上の賠償金とは調整されませんので、認定されれば給付されます。
支給額
支給額は、次表のとおりの一時金です。
障害等級 |
支給額 |
第1級 |
342 万円 |
第2級 |
320 万円 |
第3級 |
300 万円 |
第4級 |
264 万円 |
第5級 |
225 万円 |
第6級 |
192 万円 |
第7級 |
159 万円 |
第8級 |
65 万円 |
第9級 |
50 万円 |
第10級 |
39 万円 |
第11級 |
29 万円 |
第12級 |
20 万円 |
第13級 |
14 万円 |
第14級 |
8 万円 |
(3)遺族特別支給金
支給要件
業務上の事由又は通勤により労働者が死亡した場合に、当該労働者の遺族に対し、その申請に基づいて支給されます。
また民事上の賠償金とは調整されませんので、認定されれば給付されます。
支給額
支給額は、300万円の一時金です。
遺族特別支給金の支給を受ける遺族が2人以上ある場合には、300万円をその人数で除して得た額が、1人当りの支給額とされます。
(4)傷病特別支給金
支給要件
労働者が、業務上の事由又は通勤により負傷し、又は疾病にかかり、当該傷病に係る療養の開始後1年6か月を経過した日において次のいずれにも該当する時、又は同日後次のいずれにも該当することとなったとき、当該労働者に対し、その申請に基づいて支給されます。
イ.当該負傷又は疾病が治っていないこと。
ロ.当該負傷又は疾病による障害の程度が傷病等級に該当すること。
また民事上の賠償金とは調整されませんので、認定されれば給付されます。
支給額
支給額は、当該傷病に関して、初めて上記の支給要件に該当することとなった時点における傷病等級に応じ、次表のとおりの額(一時金)とされています。
傷病等級 |
支給額 |
第1級 |
114 万円 |
第2級 |
107 万円 |
第3級 |
100 万円 |
2・ボーナス特別支給金
給付基礎日額の算定基礎には、ボーナス等の特別給付は算入されていないので、ボーナス特別支給金は、年金給付等の受給者の援護を諮るために、このボーナス等の特別給付を基礎として算定支給されるものです。
(1)障害特別年金
障害特別年金は、障害(補償)年金の受給権者に対して支給され、その額は障害の程度に応じて次の表のとおりです。
障害特別年金 |
障害等級第1級 |
算定基礎日額の313日分 |
算定基礎日額
障害特別年金を受けている労働者が、その障害の程度を自然的な経過により変更し、他の障害等級に該当することとなった場合、加重障害の場合及び再発再治癒後の場合の取扱いについては障害年金の場合と同様に取り扱われます。
なお、障害(補償)年金の受給権者の死亡に関して支給される障害(補償)年金差額一時金又は障害(補償)年金一時金の受給権者に対し、ボーナス等の特別給 与と算定基礎とする障害特別年金差額一時金が特別支給金として支給されます。
この障害特別年金差額一時金の額は、障害等級に応じ、それぞれ次の表の額から すでに支給された障害特別年金の額を差し引いた額です。
(2)障害特別一時金
障害等級 |
金額 |
第1級 |
算定基礎日額の1,340日分 |
算定基礎日額とは
算定基礎日額とは、原則として、業務上または通勤による負傷や死亡の原因である事故が発生した日または診断によって病気にかかったことが確定した日の前 1年間にその労働者が事業主から受けた特別給与の総額(算定基礎年額)を365で割った額です。
特別給与とは、給付基礎日額の算定の基礎から除外されているボーナスなど 3か月を超える期間ごとに支払われる賃金をいい、臨時に支 払われた賃金は含まれません。
特別給与の総額が給付基礎年額(給付基礎日額の 365倍に相当する額)の 20%に相当する額を上回 る場合には、給付基礎年額の 20%に相当する額が算定基礎年額となります。
ただし、150万円が限度額です。
(3)遺族特別年金
遺族特別年金は、遺族(補償)年金の受給権者に対して支給され、その額は次の表のとおりです。
なお、遺族特別年金については前払一時金の制度が設けられていませんが、その他の取扱いについては遺族(補償)年金と同様です。
遺族年金の受給権者及びその者と生計を同じくしている遺族年金を受けることができる遺族の人数 | 遺族特別年金の額 |
1 人 |
算定基礎日額の153日分 |
2 人 |
算定基礎日額の 201日分 |
3 人 |
算定基礎日額の 223日分 |
4 人 以上 |
算定基礎日額の 245日分 |
(4)遺族特別一時金
遺族特別一時金は、遺族一時金の受給権者に対して支給され、その額は次のとおりです。
労働者の死亡の当時、遺族(補償)年金の受給資格者がいない場合は算定基礎日額の1,000日分
遺族年金の受給権者がすべて失権した場合に、すでに支給された遺族特別年金の合計額が算定基礎日額の1,000日分に満たない場合は算定基礎日額の1,000日分からすでに支給された遺族特別年金の合計額を差し引いた額
(5)傷病特別年金
傷病特別年金は、傷病(補償)年金の受給権者に対して支給され、その額は障害の程度に応じ次の表のとおりです。
傷病等級 |
金額 |
第 1 級 |
算定基礎日額の 313日分 |
(6)差額一時金
暫定措置としての特別支給金である差額支給金の内容は次のとおりです。
傷病(補償)年金の受給権者となった場合に、その者の受ける傷病(補償)年金と傷病特別年金の合計額が,年金給付基礎日額の292日分を下回る時は、その差額に相当する額が支給されます。
厚生年金保険等との併給の場合にあっては別に定める額が支給されます。
(7)特別支給金のスライド制
特別支給金のスライド制の適用については次のようになっています。
(1) 休業特別支給金については、その算定基礎が休業(補償)給付の場合と同じ休業給付日額ですので、休業(補償)給付と同様のスライド制が適用されます。
(2) 障害特別支給金、遺族特別支給金及び傷病特別支給金は、定額制のため、スライド制の適用はありません。
(3) ボーナス特別支給金については、その算定基礎である算定基礎日額が、年金給付日額と同様のスライド制が適用されます。
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