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厚生年金・国民年金(障害・遺族給付)と民事上の賠償との調整

文責 社会保険労務士 松井 宝史 2021.05.19

厚生年金・国民年金(障害・遺族給付)

自動車事故でケガをしたり、死亡した被害者が、厚生年金保険・国民年金の被保険者である場合は、その事故が原因となって、障害年金(障害厚生年金・障害基礎年金)、障害手当金または遺族年金(遺族厚生年金・遺族基礎年金などの給付が行われた時は、その給付の価額の限度で、加害者に対し、保険者(政府)が損害賠償の請求をすることになっています。

また、被害者が、年金給付をうける前に、加害者から同一の事由で損害賠償をうけたときは、その価額の限度で、保険給付をしないことができることとなっています。

第三者行為と年金の調整

自動車事故などの第三者行為による事故にあった場合、被害者またはその遺族は、加害者である第三者に対して損害賠償を請求する権利があり、一方では公的年金制度による給付を受ける権利が発生することがあります。

この場合、厚生年金・国民年金には、被害者等が二重の生活保障を受けることになる不合理を防ぐために、必要な調整規程が設けられています。

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損害賠償を受けたときは一定期間支給停止

第三者行為による障害・死亡などの事故について給付が行われ、その受給権者が第三者から同一の事由について損害賠償を受けたときは、保険者(日本年金機構)はその価額の限度で保険給付をしなくても良いことになっています。

生活補償費相当額

たとえば、自動車事故による死亡の例で、遺族基礎年金・遺族厚生年金の受給権者が、加害者から葬祭費、逸失利益、慰謝料などの損害賠償を受けた場合、そのうち、遺族年金と同じ性格のもの、つまり、名目は何であっても、遺族の生活補償部分に相当するもの(通常は逸失利益または休業補償費)について、その額を限度として遺族年金は支給されません。

被害者に過失があった場合は、いわゆる過失相殺によって損害賠償額は減額されますが、生活補償費相当額は減額された額で計算されます。

年金の支給停止期間は最長3年

年金を支給停止する期間は次の式で計算された月数ですが、その月数が36ヶ月を超えるときは36ヶ月とされ、つまり最長で3年間支給停止されます。

年金の支給が停止されるのは、事故発生日からとされています。

皆さんがよく勘違いされるのは、症状固定から3年だと思われています。重いお怪我の場合、治療から症状固定まで2年以上かかる場合があります。

障害年金の申請は、事故から1年6ヶ月経ってからとなりますので、申請をして支給が決定される頃には、年金の支給停止期間の3年のうち2年分は経過していることになります。

障害手当金の支給調整

厚生年金保険の障害手当金については、下記ページで算出した額が障害手当金の額よりも高額な場合は手当金は支給されず、その額が手当金の額に満たないときはその差額が支給されます。

厚生年金保険法及び国民年金法に基づく給付と損害賠償額との調整の取扱いについてを参照ください。

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