脳梗塞での労災保険認定要件のうち負荷の程度を評価する視点
文責 社会保険労務士 宮本 麻由美 2026.02.11
労災保険で認定要件されるための負荷の程度を評価する視点は下記のようになります。
一つずつ確認して、申立書の中に盛り込んで行く必要があります。
脳梗塞の場合、失語の後遺症が残る場合がありますので、発症前からどのような仕事をしていたかをいつもの会話の中から探っていくことになります。
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負荷の程度を評価する視点
★特に過重な業務
日常業務に比較して特に過重な身体的、精神的負荷を生じさせたと客観的に認められる業務をいいます。
※「日常業務」とは、通常の所定労働時間内の所定業務内容をいいます。★過重負荷の有無の判断
著しい疲労の蓄積をもたらす特に過重な業務に就労したと認められるか否かは、業務量、業務内容、作業環境等を考慮し、同種労働者にとっても、特に過重な身体的、精神的負荷と認められる業務であるか否かという観点から、客観的かる総合的に判断されます。
業務の過重性の具体的な評価をするには、疲労の蓄積の観点から、労働時間の他、労働時間以外の負荷要因について十分検討をしてくれます。
※「同種労働者」とは、脳。心臓疾患を発症した労働者と職種、職場における立場や職責、年齢、経験等が類似する者をいい、基礎疾患を有していたとしても日常業務を支障なく遂行できる者を含みます。
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労働時間
★労働時間の評価
疲労に蓄積をもたらす最も重要な要因と考えられる労働時間に着目すると、その時間が長いほど、業務の過重性が増します。具体的には、発症日を起点とした1か月単位の連続した期間について、以下の①~③を踏まえて判断します。
①発症前1か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね45時間を超える時間外労働が認められない場合は、業務と発症との関連性が弱いと評価できること
②おおむね45時間を超えて時間外労働時間が長くなるほど、業務と発症との関連性が徐々に強まると評価できること
③発症前1か月におおむね100時間又は発症前2か月ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いと評価できること
※「発症前1か月間ないし6か月間」は、発症前1か月間、発症前2か月間、発症前3か月間、発症前4か月間、発症前5か月間、発症前6か月間のすべての期間をいいます。※「時間外労働」とは、1週間当たり40時間を超えてろうどうした時間をいいます。
※「発症前2か月間ないし6か月間」は、発症前1か月間、発症前2か月間、発症前3か月間、発症前4か月間、発症前5か月間、発症前6か月間のいずれかの期間をいいます。
★労働時間と労働時間以外の負荷要因の総合的な評価
労働時間以外の負荷要因において一定の負荷が認められる場合には、労働時間の状況をも総合的に考慮し、業務と発症との関連性が強いといえるかどうかを適切に判断します。
具体的には以下のとおりです。労働時間の評価の③の水準には至らないがこれに近い時間外労働が認められる場合には、特に他の負荷要因の状況を十分に考慮し、そのような時間外労働に加えて一定の労働時間以外の負荷が認められるときには、業務と発症との関連性が強いと評価できること
労働時間+労働時間以外の負荷要因=総合的に考慮して判断
★労働時間以外の負荷要因
〇勤務時間の不規則性
拘束時間の長い業務
拘束時間数、実労働時間数、労働密度(実作業時間と手待時間との割合等)、休憩・仮眠時間数及び回数、休憩・仮眠施設の状況(広さ、空調、騒音等)、業務内容等
休日のない連続勤務
連続勤務日数、連続労働日と発症との近接性、休日の数、実労働時間数、労働密度(実作業時間と手待時間との割合等)、業務内容等
勤務間インターバルが短い勤務
勤務間インターバルが短い勤務の程度(時間数、頻度、連続性等)、業務内容等
※長期間の過重業務の判断に当たっては、勤務間インターバルがおおむね11時間未満に勤務の有無、時間数、連続性等について評価
不規則な勤務・交替制勤務・深夜勤務予定された業務スケジュールの変更の頻度・程度・事前の通知状況、予定された業務スケジュールの変更の予測の度合、交替制勤務における予定された始業・終業時刻のばらつきの程度、勤務のため夜間に十分な睡眠が取れない程度(勤務の時間帯や深夜時間帯の勤務の頻度・連続性)、一勤務の長さ(引き続いて実施される連続勤務の長さ)、一勤務中の休憩の時間数及び回数、休憩や仮眠施設の状況(広さ、空調、騒音等)、業務内容及びその変更の程度
〇事業場外における移動を伴う業務出張の多い業務
出張(特に時差のある海外出張)の頻度、出張が連続する程度、出張期間、交通手段、移動時間及び移動時間中の状況、移動距離、出張先の多様性、宿泊の有無、宿泊施設の状況、出張中における睡眠を含む休憩・休息の状況、出張中の業務内容
併せて出張による疲労の回復状況等も踏まえて評価
飛行による時差については、時差の程度(特に4時間以上の時差の程度)、時差を伴う移動の頻度、移動の方向等の視点から検討
出張に伴う勤務時間の不規則性については「勤務時間の不規則性」により評価
その他事業場外における移動を伴う業務
移動(特に時差のある海外への移動)の頻度、交通手段、移動時間及び移動時間中の状況、移動距離、移動先の多様性、宿泊の有無、宿泊施設の状況、宿泊を伴う場合の睡眠を含む
休憩・休息の状況、業務内容等
併せて移動による疲労の回復状況等も踏まえて評価
時差及び移動に伴う禁句時間の不規則性については「出張の多い業務」と同様に評価〇心理的負荷を伴う業務
別表1及び別表2に掲げられている日常的に心理的負荷を伴う業務又は心理的負荷を伴う具体的出来事等
〇具体的負荷を伴う業務業務内容のうち重量物の運搬、人力での掘削作業などの身体的負荷が大きい作業の種類、作業強度、作業量、作業時間、歩行や立位を伴う状況等のほか、当該業務が日常業務と質的に著しく異なる場合にはその程度(事務職の労働者が著しい肉体労働を行うなど)
〇作業環境温度環境
寒冷・暑熱の程度、防寒・防暑衣類の着用の状況、一連続作業時間中の採暖・冷却の状況、慣例と暑熱との交互のばく露の状況、著しい温度差がある場所への出入りの頻度、水便補給の状況等
※長期間の過重業務の判断に当たっては、付加的に評価
騒音おおむね80DBを超える騒音に頻度、そのばく露時間・期間・防音保護具の着用の状況等
※長期間の過重業務の判断に当たっては、付加的に評価
ウ 長期間の過重業務について
(ア) 疲労の蓄積の考え方
恒常的な長時間労働等の負荷が長期間にわたって作用した場合には、「疲労の蓄積」が生じ、これが血管病変等をその自然経過を超えて著しく増悪させ、その結果、脳・心臓疾患を発症させることがある。
このことから、発症との関連性において、業務の過重性を評価するに当たっては、発症時における疲労の蓄積がどの程度であったかという観点から判断することとする。
(イ) 評価期間
発症前おおむね6か月間
(ウ) 過重負荷の有無の判断
著しい疲労の蓄積をもたらす特に過重な業務に就労したと認められるか否かについては、業務量、業務内容、作業環境等を考慮し、同僚等にとっても、特に過重な身体的、精神的負荷と認められるか否かという観点から、客観的かつ総合的に判断すること。
具体的には、労働時間のほか前記イの(ウ)のb~gまでに示した負荷要因について十分検討すること。
その際、疲労の蓄積をもたらす最も重要な要因と考えられる労働時間に着目すると、その時間が長いほど、業務の過重性が増すところであり、具体的には、発症日を起点とした1か月単位の連続した期間をみて、
① 発症前1か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね45時問を超える時間外
労働が認められない場合は、業務と発症との関連性が弱いが、おおむね45時間を超えて時間外労働時間が長くなるほど、業務と発症との関連性が徐々に強まると評価できること② 発症前1か月間におおむね100時間又は発症前2か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いと評価できること。
以上を踏まえて判断すること
ここでいう「時間外労働時間数」は、1週間当り40時間を超えて労働した時間数である。
脳・心臓疾患発症前の身体の状況
脳・心臓疾患の発症には、高血圧、飲酒、喫煙、高脂血症、肥満、糖尿病等のリスクファクターの関与が指摘されています。
特に、複数のリスクファクターを有する者は、発症のリスクが極めて高いとされているので、労働基準監督署は、発症前の健康状態を確認して認定業務にあたっています。
労働基準監督署は、勤務先の会社の定期健康診断結果の提出を求めます。
また、脳・心臓疾患を発症した本人または関係者から過去の入院・通院歴の状況等を確認されます。そして、協会けんぽ等のレセプトも過去5年ほどに渡って照会されることになります。
既に病院にかかっている場合は、リスクファクターと基礎疾患の状態・程度を把握するために、治療担当医に医療照会がなされます。
専門医などの意見を聞いて、最終的に労働基準監督署長が労災認定の可否を決定します。




