労働者派遣事業関係業務取扱要領ジョイント・ベンチャー(JV)との関係_まつろむ流派遣会社の就職の考え方

ジョイント・ベンチャー(JV)との関係

イ JVの請負契約の形式による業務の処理

(イ) JVは、数社が共同して業務を処理するために結成された民法上の組合(民法第667条)の一種であり、JV自身がJV参加の各社 (以下「構成員」という。)の労働者を雇用するという評価はできないが、JVが民法上の組合である以上、構成員が自己の雇用する労働者をJV参加の他社の労働者等の指揮命令の下に従事させたとしても、通常、それは自己のために行われるものとなり、当該法律関係は、構成員の雇用する労働者を他人の指揮命令を受けて、「自 己のために」労働に従事させるものであり、法第2条第1号の「労働者派遣」には該当しない。

しかしながら、このようなJVは構成員の労働者の就業が労働者派遣に該当することを免れるための偽装の手段に利用されるおそれがあり、その法的評価を厳格に行う必要がある。

(ロ) JVが民法上の組合に該当し、構成員が自己の雇用する労働者をJV参加の他社の労働者等の指揮命令の下に労働に従事させることが労働者派遣に該当しないためには、次のいずれにも該当することが必要である。

a JVが注文主との間で締結した請負契約に基づく業務の処理について全ての構成員が連帯して責任を負うこと。

b JVの業務処理に際し、不法行為により他人に損害を与えた場合の損害賠償義務について全ての構成員が連帯して責任を負うこと。

c 全ての構成員が、JVの業務処理に関与する権利を有すること。

d 全ての構成員が、JVの業務処理につき利害関係を有し、利益分配を受けること。

e JVの結成は、全ての構成員の間において合同的に行わなければならず、その際、当該JVの目的及び全ての構成員による共同の業務処理の2点について合意が成立しなければなら ないこと。

f 全ての構成員が、JVに対し出資義務を負うこと。


g 業務の遂行に当たり、各構成員の労働者間において行われる次に掲げる指示その他の管理が常に特定の構成員の労働者等から特定の構成員の労働者に対し一方的に行われるものではなく、各構成員の労働者が、各構成員間において対等の資格に基づき共同で業務を遂行している実態にあること。

① 業務の遂行に関する指示その他の管理(業務の遂行方法に関する指示その他の管理、業務の遂行に関する評価等に係る指示その他の管理)

② 労働時間等に関する指示その他の管理(出退勤、休憩時間、休日、休暇等に関する指示 その他の管理(これらの単なる把握を除く。)、時間外労働、休日労働における指示その他の管理(これらの場合における労働時間等の単なる把握を除く。))

③ 企業における秩序の維持、確保等のための指示その他の管理(労働者の服務上の規律に 関する事項についての指示その他の管理、労働者の配置等の決定及び変更)

h 請負契約により請け負った業務を処理するJVに参加するものとして、a、b及びfに加えて次のいずれにも該当する実態にあること。

① 全ての構成員が、業務の処理に要する資金につき、調達、支弁すること。

② 全ての構成員が、業務の処理について、民法、商法その他の法律に規定された事業主としての責任を負うこと。

③ 全ての構成員が次のいずれかに該当し、単に肉体的な労働力を提供するものではないこと。

ⅰ 業務の処理に要する機械、設備若しくは器材(業務上必要な簡易な工具を除く。)又 は材料若しくは資材を、自己の責任と負担で相互に準備し、調達すること。

ⅱ 業務の処理に要する企画又は専門的な技術若しくは経験を、自ら相互に提供すること。

(ハ) JVが(ロ)のいずれの要件をも満たす場合については、JVと注文主との間で締結した請負契約に基づき、構成員が業務を処理し、また、JVが代表者を決めて、当該代表者がJVを代表して、注文主に請負代金の請求、受領及び財産管理等を行っても、法において特段の問題は 生じないと考えられる。

ロ JVによる労働者派遣事業の実施

(イ) JVは、数社が共同して業務を処理するために結成された民法上の組合(民法第667条)であるが、法人格を取得するものではなく、JV自身が構成員の労働者を雇用するという評価はできないため(イの (イ)参照)、JVの構成員の労働者を他人の指揮命令を受けて当該他人のための労働に従事させ、これに伴い派遣労働者の就業条件の整備等に関する措置を講ずるような労働者派遣事業を行う主体となることは不可能である。

したがって、JVがイに述べた請負契約の当事者となることはあっても、法第 26 条に規定する労働者派遣契約の当事者となることはない。

(ロ)このため、数社が共同で労働者派遣事業を行う場合にも、必ず個々の派遣元と派遣先との間でそれぞれ別個の労働者派遣契約が締結される必要があるが、この場合であっても、派遣元がその中から代表者を決めて、当該代表者が代表して派遣先に派遣料金の請求、受領及び財産管理等を行うことは、法において特段の問題は生じないものと考えられる。

(ハ) この場合、派遣先において、派遣元の各社が自己の雇用する労働者を派遣元の他社の労働者の指揮命令の下に労働に従事させる場合、例えば特定の派遣元(A)の労働者が特定の派遣元 (B、C)の労働者に対し一方的に指揮命令を行うものであっても、派遣元(A)の労働者は 派遣先のために派遣先の業務の遂行として派遣元(B、C)の労働者に対して指揮命令を行っており、派遣元(B、C)の労働者は、派遣先の指揮命令を受けて、派遣先のために労働に従事するものとなるから、ともに法第2条第1号の「労働者派遣」に該当し、法において特段の 問題は生じない。

ハ その他

JVの行う労働者派遣事業に類するものとして、次の点に留意すること。

(イ) 派遣元に対して派遣先を、派遣先に対して派遣元をそれぞれあっせんし、両者間での労働者派遣契約の結成を促し、援助する行為は法上禁止されていないこと。

(ロ)また、派遣元のために、当該派遣元が締結した労働者派遣契約の履行について派遣先との間で保証その他その履行を担保するための種々の契約の締結等を行うことも、同様に法上禁止されていないこと。

労働者派遣事業関係業務取扱要領 令和3年4月に戻る

目次

派遣の種類

派遣で働く時に

派遣会社の選び方

派遣社員として働くためのチェックリスト

具体的な派遣先

労働者派遣事業関係業務取扱要領 令和3年4月

仕事探しの方法