就業規則に関するお困りごとは
文責 社会保険労務士 松井 宝史 2021.05.08
お困りごとは?
募集・採用
1.求人票の記載は労働条件になるか?
労働条件は書面で明示する必要があります
求人をして1名採用しました。
求人票には月給20万円と書きましたが、とりあえず月給18万円で雇ってもいいでしょうか?
労働者を雇い入れた場合、使用者は賃金額などの労働条件を明示しなければならず、その方法として労働条件を記載した書面を交付する義務があります。
ですから、「だいたい」とか「いくらくらい」というのでは問題がありますし、後になってトラブル発生の原因ともなります。
法律で、書面による明示が義務付けられている労働条件は次のとおりです。
1. 労働契約の期間に関する事項
2. 就業の場所及び従事すべき業務に関する事項
3. 労働時間、休日、休暇並びに交替勤務に関する事項
4. 賃金の決定、計算、支払いの方法、賃金の締切り及び支払いの時期ならびに昇給に関する事項
5. 退職に関する事項
1~5の事項については、原則、書面の交付が必要です。
ただし、労働者が希望した場合は、以下のような方法で明示することができるようになります。
ただし、出出して書面を作成できるものに限られます。
なお、労働者の個人的な事情によらず、一般的に出?可能な状態であれば、出力して書面を作成できると認められます。
① FAX
② Eメールや、Yahoo!メール、
Gmail等のWebメールサービス
③ LINEやメッセンジャー等のSNSメッセージ機能等
(注)第三者に閲覧させることを目的としている労働者のブログや個人のホームページへの書き込みによる明示は認められません。
また、求人票の金額と交付した労働条件があまりにもかけ離れている時は、企業は信義誠実の原則に対する義務違反になることがあります。
賃金、賞与
賃金・賞与
1.経営の悪化を理由に賃金の引下げをすることができますか?
労働条件の一方的切り下げは無効
労働条件は当事者の合意によって決定されますので、このように労使の合意によらない、使用者の一方的な労働条件の切り下げには法的根拠がありません。
したがって、労働者は従来どおりの労働条件に基づく契約の履行を求めることができ、仮に使用者が一方的に賃金を減額した場合は賃金不払になります。
しかし、最近、こうした使用者による一方的な労働条件の切り下げについて、「変更解約告知」という考え方が示されました(スカンジナビア航空事件 平7.4.13東京地裁)。
これは、使用者が労働者に労働条件の切り下げを申し入れ、それに同意しない労働者は解雇するという条件をつけて、労働条件の変更を通知するものです。
この事件では、会社の申出を承諾しなかった労働者が解雇されましたが、裁判所は 1.労働条件の変更が会社業務の運営にとって必要不可欠であり、 2.その必要性が労働者の受ける不利益を上回っていて、 3.新契約に応じない場合労働者の解雇がやむを得ないと認められ、かつ、 4.解雇を回避するための努力が十分に尽くされているときは、新契約の締結申し入れに応じない労働者を解雇することができる旨判示し、労働条件の変更提案に合理性があれば解雇も有効となるという判断を示しました。
なお、労働者は、即時抗告し、即時抗告審(東京高裁)では、解雇撤回、復職、配転、年俸制導入を含めた労働条件の一定の切り下げ等を内容とする和解が成立しました。
2.一般社員の従業員を年俸制にした場合割増賃金は不要か?
管理監督者ではない一部の一般従業員にも年俸制を導入しようと思っていますが、年間の金額をあらかじめ確定しておくので、時間外労働などの割増賃金を含むものとして年俸額を決定しておけば、割増賃金の支払は不要となりますか?
一般社員の従業員を年俸制にした場合でも割増賃金は一般的には必要
年俸制適用労働者であっても、時間外・休日労働、深夜労働の割増賃金を支払わなければなりません。
しかし、割増賃金相当分を含めて年俸制を決定することができないわけではありません。
行政解釈は、「年俸に時間外労働等の割増賃金が含まれていることが労働契約の内容であることが明らかであって、割増賃金相当分と通常の労働時間に対応する賃金部分に区別することができ、かつ、割増賃金相当部分が法定の割増賃金以上支払われている場合は労働基準法第37条に違反しないと解される」(平12.3.8基収第78号)としています。
年俸に割増賃金が含まれていることが就業規則や賃金規定で明記されていても割増賃金相当額が不明の場合には、年俸に割増賃金が含まれているとは認められませんので、別途、割増賃金を支払う必要があります。
時間外労働の多い月、少ない月があって、年間で見れば実際の割増賃金を上回っていたとしても、ある月の時間外労働の割増賃金が割増賃金相当額より多くなった場合には、その月には不足分の割増賃金を支払わなければなりません。
3.フレックスタイム制で清算期間をまたぐと割増賃金を支払うべきか?
清算期間を毎月1日から月末とし清算期間の総労働時間を「当月の所定労働日数×8時間」と定めています。
月末の土曜休日を翌月の初めの労働日と振り替えた場合、振り替えたことにより労働日が1日増えた月は時間外労働の割増賃金が必要でしょうか?
フレックスタイム制は、1か月以内の一定期間(清算期間)の総労働時間を定めて置き、労働者がその範囲内で各日の始業、終業時刻を自由に選択して働くことができます。
振り替えた日と振り替えるべき日が2つの清算期間にまたがる場合には、振り替えられた出勤日となった日を含む清算期間は労働日が1日増えることになり、振り替えられて休日となった日を含む清算期間は労働日が1日少なくなります。
暦日数が30日の月の場合、清算期間の総労働時間を168時間と定めていれば、その時間を超えて法定労働時間の総枠171.4時間までの労働には、時間単価(100%)の支払が必要です。
また、法定労働時間の総枠を超える場合には、割増賃金(125%)の支払が必要となります。
働き方改革の一環として、フレックスタイム制に関する法改正が行われました。(2019年4月施行)
それによりますと、フレックスタイム制の清算期間の上限が3か月に延長されました。
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