遺族厚生年金について解説してみます。
ある日突然、ご主人が亡くなった場合、このページを参考にしてください。
遺族厚生年金の額は、報酬比例の年金額の4分の3に相当する額で、次の式で計算されます。
■平成15年3月以前の期間に係る報酬比例部分の計算式
(A)賞与を除いた平均月収×7.125(給付乗率)/1000×(平成15年3月以前の厚生年金の加入月数)
昭和21年4月1日以前に生まれた方については、給付乗率が異なります。
■平成15年3月以後の期間に係る報酬比例部分の計算式
(B)賞与を含めた平均月収×5.481(給付乗率)/1000×(平成15年3月以後の厚生年金の加入月数)
昭和21年4月1日以前に生まれた方については、給付乗率が異なります。
■(A)+(B)に×4分の3
従前額とは、平成6年の水準で標準報酬を再評価し、年金額を計算したものです。
上記の計算式で算出した額が従前額(以下の計算式で算出した額)を下回る場合は、従前額が報酬比例部分の額になります。
■平成15年3月以前の期間に係る報酬比例部分の計算式
(A)賞与を除いた平均月収×7.5(給付乗率)/1000×(平成15年3月以前の厚生年金の加入月数)
昭和21年4月1日以前に生まれた方については、給付乗率が異なります。
■平成15年3月以後の期間に係る報酬比例部分の計算式
(B)賞与を含めた平均月収×5.769(給付乗率)/1000×(平成15年3月以後の厚生年金の加入月数)
昭和21年4月1日以前に生まれた方については、給付乗率が異なります。
報酬比例部分(従前額)=( A + B )× 0.995×4分の3
昭和13年4月1日以前に生まれた方は0.995が0.997となります。
65歳以上で老齢厚生(退職共済)年金を受け取る権利がある方が、配偶者の死亡による遺族厚生年金を受け取るときは、「死亡した方の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の額」と「死亡した方の老齢厚生年金の報酬比例部分の額の2分の1の額と自身の老齢厚生(退職共済)年金の額の2分の1の額を合算した額」を比較し、高い方の額が遺族厚生年金の額となります。
死亡した方に生計を維持されていた以下の遺族のうち、最も優先順位の高い方が受け取ることができます。
なお遺族基礎年金を受給できる遺族の方はあわせて受給できます。
(1)妻(※1)
(2)子(18歳になった年度の3月31日までにある方、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある方。)
(3)孫(18歳になった年度の3月31日までにある方、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある方。)
(4)夫(死亡当時に55歳以上である方に限ります。)(※2)
(4)父母(死亡当時に55歳以上である方に限ります。)(※3)
(4)祖父母(死亡当時に55歳以上である方に限ります。)(※3)
(※1) 子のない30歳未満の妻は、5年間のみ受給できます。
(※2) 受給開始は60歳からとなります。ただし遺族基礎年金をあわせて受給できる場合に限り、55歳から60歳の間であっても遺族厚生年金を受給できます。
(※3) 受給開始は60歳からとなります。
上記(1)から(3)で支給される場合、故人の厚生年金の加入月数が300月(25年)未満であっても300月で計算されます。
厚生年金の加入月数が300月未満であっても300月で計算され、かつ、平成15年3月以前と4月以後の加入期間がある故人について支給される場合、上記の2つの式を合計した額に、「300÷実際の加入期間の月数」で算出した数を乗じて、全体を300月に増額します。
上記(4)で支給される場合、故人の厚生年金の加入月数で計算され、故人が昭和21年4月1日以前生まれのときは、前記の式の1000分の7.5は故人の生年月日に応じて1000分の10~7.61、1000分の5.769は生年月日に応じて1000分の7.692から5.854となります。
報酬比例の年金では、上記の式で計算された5%適正化前の従前額が保障されています。
上記(1)から(3)のいずれかと(4)の両方に該当する場合、(1)から(3)のいずれかで支給されますが、遺族が希望すれば(4)で支給されます。
繰下げも75歳までできるようになりました。
また、繰上げの減額率も0.5%から0.4%に緩和され、年金の受給開始も60歳から75歳までのどれを選べばいいか幅が広がりました。
繰下げ待機中に夫が死亡した場合、遺族年金はどうなるかという女性からの質問が多くなってきました。
事例として、夫も妻も老齢基礎年金と老齢厚生年金を同時に繰下げていた場合を考えてみます。
夫がちょうど69歳に心筋梗塞で亡くなりました。
妻はちょうど68歳になったところです。
まず、妻の繰下げは、その時点で増額率が固定されます。
3年繰下げなので、0.7%×36月=25.2%の増額率となります。
この時点で妻は、65歳時点にさかのぼって自分の老齢厚生年金を請求するか、夫が死亡した時点で自分の老齢厚生年金を繰下げ請求をするのか選択することができます。
併せて、老齢基礎年金も繰下げ待機中なので、同じようにどちらかを選択できることになります。
詳しいことは省略しますが、できれば両方とも65歳の時点までさかのぼって、36月分一括請求することをおすすめします。
ただし、妻の年金の方が夫の年金よりも多い場合は、両方とも自分の年金を繰下げ請求する方がいいと思います。
繰下げ待機中に死亡した場合、遺族は繰下げの年金の請求はできません。
遺族(今回は妻)からの未支給年金の請求で、65歳にさかのぼっての年金額で決定したうえで、4年分(48月分)を一括して請求することになります。
この場合、未支給年金なので、妻の一時所得となります。
相続財産ではありません。
遺族厚生年金の年金額は、繰下げの増額率はかからず、本来の計算で計算された年金額の支給となります。
遺族厚生年金(長期の遺族年金では、死亡した夫の被保険者期間が20年以上の場合(中高齢者の期間短縮の特例などによって20年未満の被保険者期間で老齢厚生年金の受給資格期間を満たした人はその期間))の加算給付の1つです。
遺族基礎年金は子どものいない妻には支給されませんし、子がいてもその子が18歳(18歳の誕生日の属する年度末まで)または20歳(1級・2級の障害の子)に達すれば支給されなくなりますが、夫が死亡したときに40歳以上で子のない妻(夫の死亡後40歳に達した当時、子がいた妻も含む)が受ける遺族厚生年金には、40歳から65歳になるまでの間、中高齢の寡婦加算(定額)が加算されます。
中高齢の加算として、年額583,400円(月額48,616円)が支給されます。
①夫が亡くなったとき、40歳以上65歳未満で、生計を同じくしている子(※2)がいない妻。
②遺族厚生年金と遺族基礎年金を受けていた子のある妻(※3)が、子が18歳到達年度の末日に達した(障害の状態にある場合は20歳に達した)等のため、遺族基礎年金を受給できなくなったとき。
※1 老齢厚生年金の受給権者または受給資格期間を満たしている夫が死亡したときは、死亡した夫の厚生年金保険の被保険者期間が20年(中高齢者の期間短縮の特例などによって20年未満の被保険者期間で共済組合等の加入期間を除いた老齢厚生年金の受給資格期間を満たした人はその期間)以上の場合に限ります。
※2 「子」とは次の人に限ります。
18歳到達年度の末日(3月31日)を経過していない子
20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の障害の状態にある子
尚、妻が65歳になると自分の老齢基礎年金が受けられるため、中高齢の寡婦加算はなくなります。
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