うつ病などの精神障害の労災保険申請

うつ病の労災保険申請について

文責 社会保険労務士 松井 宝史 2020.07.3

うつ病の労災保険申請について

平成から令和の時代にかけて、仕事によるストレスが関係した精神障害にかかる人が増えてきたように感じます。

いわゆるうつ病という気分障害です。

うつ病が発症した場合、それが業務上のものと認められるかの判断を、労働基準監督署長が行っていきます。

社会保険労務士法人愛知労務は、そのようなうつ病を発症した方の労災保険申請のお手伝いを平成27年から行っています。

厚生労働省は、平成23年12月に「心理的負荷による精神障害の認定基準」を新たに定め、現在はそれに基づいて労災認定が行われています。

厚生労働省の精神障害の発病についての考え方は、下記のようになっています。

精神障害は、外部からのストレス(仕事によるストレスや私生活でのストレス)とそのストレスへの個人の対応力の強さとの関係で発病に至ります。

発病した精神障害が労災認定されるのは、その発病が仕事による強いストレスによるものと判断できる場合に限ります。

仕事によるストレス(業務による心理的負荷)が強かった場合でも、同時に私生活でのストレス(業務以外の心理的負荷)が強かったり、その人の既往症やするコール依存など(個体側要因)が関係している場合には、どれが発病の原因なのかを医学的に慎重に判断されます。

うつ病を労災申請する時に、申立書を記入して労働基準監督署に提出していきます。

その書類の中に、仕事のストレスは何があったか?私生活でのストレスは何があったか?を事細かく記述していきます。

また併せて、アルコールの飲酒量なども記述していきます。

また、過去にうつ病などの精神障害を発症したかも記入します。

労働基準監督署も、同意書を本人から取って、健康保険での治療歴を過去5年ほど確認していきます。

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精神障害の労災認定基準に「パワーハラスメント」が明示されました

厚生労働省では、労働者に発病した精神障害が業務上災害として労災認定できるか判断するために、「心理的負荷による精神障害の認定基準」を定めています。

認定基準では、発病前のおおむね6か月間に起きた業務による出来事について、強い心理的負荷が認められる場合に、認定要件の一つを満たすとなっています。

令和2年6月から改正労働施策総合推進法が施行され、パワーハラスメントの定義が法律上規定されたこと等を踏まえ、認定基準の「業務による心理的負荷評価表」にパワーハラスメントが明示されました。

パワーハラスメントの定義

職場におけるパワーハラスメントとは、職場において行われる以下の3つの要素を全て満たす言動とされます。

①優越的な関係を背景とした言動であって、

②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより。

③就業環境が害されるもの

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うつ病になった時

自分がうつ病になったり、ご主人やご家族の方がうつ病になったりしたときは、まず治療をどうしようかと考えると思います。

朝起きるのが遅くなったり、気力の低下や疲労感、倦怠感があるなどの症状が出てきます。思考力や集中力の減退があったり、いろいろなことを決断することもすぐにできなくなったりしてきます。

よく眠れなくなったり、中途で目が覚めて再び眠りのつけなくなったりすることも出てきます。

そのような時は、いつものかかりつけの内科にかかったり、心療内科などにかかったりすると思います。

会社での長時間労働やいじめ、嫌がらせ、パワハラ等でうつ状態になった時、業務に起因する強いストレスが原因と思われても、まず病院の治療は健康保険を使っていくことになります。

私の事務所の近くの心療内科では、事前にクリニックのホームページから「問診票」がダウンロードできるようになっています。

その問診票に記入して、クリニックに行くときに持っていくことになっています。(当日、クリニックで書くことも可能となっています)

いつ頃から症状が始まったか、何かきっかけと思われることがあるか、などを記入するようになっています。

会社に出勤することが難しい場合は、病院で診察を受け、診断書が出たら会社に提出をして休業をしていくことになります。

うつ病になると、家庭生活も職場生活もすべてにおいて障害が生じてきます。

職場においては十分な能力が発揮できず、欠勤が多くなり、仕事の能力が落ち、長期の休業となっていきます。

そのようなときは、まず、健康保険の傷病手当金を請求していくことになります。

傷病手当金

傷病手当金の申請書は、現在4枚に分かれています。1枚目と2枚目は、本人が記入するようになっています。

3枚目は、会社が証明する用紙です。そして、4枚目が大事な書類で、病院の先生が証明する用紙となっています。

病院の先生が証明する欄で、「主たる症状および経過」「治療内容、検査結果、療養指導」等を記入してくれます。

第1回目の傷病手当金の申請については、上記の欄に病院の先生が「うつ病」になった経緯を記入してくれる場合があります。

傷病手当金を申請する前に、書類のコピーを取っておくことをお勧めします。

労災保険の休業補償給付の申請は、健康保険の傷病手当金の申請と同時進行となります。

社会保険労務士に労災申請をお任せいただければ、病院にご説明をさせていただき、傷病手当金と労災補償給付の同時進行を進めていきます。

労災保険の申立書

その後、「申立書」を労働基準監督署に提出することになります。

この用紙は、後日、本人又はご遺族の方が労働基準監督署に出向いて、労働基準監督署の担当官の聴取を受ける時の大事な書類となります。

「病気について、精神的な症状はいつ頃から始まりましたか。」という質問事項があります。

これは、病院に行った時期を記入するのではなく、症状が出た時期を記入することになります。

精神的な症状が出た時期を特定することによって、その日前6か月間の「出来事」や「労働時間」を調査することになります。

「その症状を含めて、どのような症状がどの位続いたのかについてできるだけ詳しく教えてください。また、病院に行くことになったきっかけについても教えてください。」という質問事項があります。

身体の痛みなどの不調や胸腹部のもたれ、吐き気、全身の倦怠感や気分の落ち込みややる気が起きないなどの症状を記入することになります。

病院に行くことになったきっかけも大事なことなので思い出して記入をしてください。

精神障害による自殺の取扱いについて(基発第545号平成11年9月14日)

労働者災害補償保険法第12条の2の2第1項の「故意」については、昭和40年7月31日付基発第901号「労働者災害補償保険法の一部を改正する法律の施行について」により、結果の発生を意図した故意であると解釈してきたところであるが、このことに関し、精神障害を有するものが自殺した場合の取扱いについては下記のとおりとするので、今後遺漏のないようされたい。

                   記

業務上の精神障害によって、正常の認識、行為選択能力が著しく阻害され、又は自殺行為を思いとどまる精神的な抑制力が著しく阻害されている状態で自殺が行われたと認められる場合には、結果の発生を意図した故意には該当しない。


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