通勤途中の自転車死亡事故
文責 社会保険労務士 松井 宝史 最終更新日:2022.03.06
S様 20歳代男性
通勤途中での死亡事故の場合
S様は、自転車で通勤途中、横断歩道を渡っている時に、自動車にはねられて頭部強打により亡くなられてしまいました。
私の母も、S様と同じように横断歩道を自転車で渡っている時に、右折の自動車にはねられて東部強打により翌日に亡くなりました。
S様のお母様より、メールにて今回のご相談を頂きました。
労災保険の申請のご相談
民事上の示談が裁判で決着したので、労災保険の給付の相談をしたい、という内容でした。
通勤災害でしたが、会社の総務担当者は、労災保険の申請書類の手続きはしてくれませんでした。
S様のお母様より事故関係の書類を郵送していただき、その書類を愛知労務で点検させて頂きました。
労災保険の遺族給付の申請
労災保険では遺族給付は、遺族年金と遺族一時金があります。
遺族年金は、「労働者の死亡当時その収入によって生計を維持していた配偶者、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹」に支給されます。
妻以外の親族については、労働者の死亡当時、一定の高齢又は若年であるか、あるいは一定の障害の状態にあることが条件となっています。
S様は未婚でしたので、配偶者と子どもはいませんでした。
ご両親はご健在ですが、55歳未満であり、上記の年齢条件に該当しませんでした。
このような場合は、遺族一時金が支給されます。
民事上の賠償金との調整
ただし、民事上の賠償の「逸失利益」と調整がかかります。
S様の平均賃金は9,800円となっていましたので、遺族一時金は、給付基礎日額9,800円の1,000日分、980万円となります。
ところが、民事上の賠償の「逸失利益」は、これをはるかに超える金額となっていましたので、遺族一時金については不支給となりました。
横断歩道を自転車で渡っている時の事故なので、S様の過失はありませんでした。
特別支給金の申請を忘れないように
労災保険には、社会復帰促進事業として、特別支給金の給付があります。
今回のS様の場合は、遺族特別支給金と、遺族ボーナス特別一時金の給付があります。
愛知労務としましては、この特別支給金のお手続を、S様のお母様よりご依頼いただきました。
会社の総務の担当者でも特別支給金については分からない方が多い
すでにS様は亡くなられていますので、勤務先の会社から書類の取り付けをするに当たり、担当者の方に労災保険の「特別支給金」の説明からしなければなりませんでした。
勤務先の担当者の方は、民事上の賠償が出ているし、遺族年金をもらえる該当者もいないということで、労災保険の申請のことがよく分かっておられない様子でした。
愛知労務としては、遺族特別支給金請求書の作成をしつつ、会社の担当者の方に粘り強く説明をさせて頂き、申請書類に会社の印鑑をいただきました。
また、事故直近の3ヶ月の給与明細とタイムカードの写し、事故前年のボーナスの支給明細の写しにつきましても、取り付けをさせて頂きました。
第三者行為災害届の作成は煩雑
相手がある通勤災害でしたので、第三者行為災害届の作成もしていきました。
相手の任意保険会社の人身担当者からも交通事故証明書や保険の付保状況の書類もいただきました。
S様の場合、会社退勤時の事故でしたので、事故当日のタイムカードの退勤時刻を確認してから、労働基準監督署に申請を致しました。
退勤時刻からかなり後の交通事故の場合、通勤災害と認められないケースもあります。
今回の場合も、会社に何回も確認して、本当の退職時刻の書類を提出してもらいました。
実は、以前通勤災害で申請した死亡事故で、退社のタイムカードの打刻時刻と交通事故に遭った時刻が3時間以上もあったので、申請が認められないことがありました。
この時は、会社から事故現場までは、30分ぐらいしかかからないので、2時間半の開きがあったので、「通勤途中」でないと労働基準監督署長に判断されてしまいました。
詳しくは、当事務所までお問合せください。
労災保険の申請を会社が手続きを渋る時は、愛知労務の社会保険労務士が手続き代行をしております。
電話:0533-83-6612 (初回相談無料です)
担当:社会保険労務士 宮本 麻由美
相談メール:
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今回のポイント
今回のポイントとしましては、民事上の示談が済んでいても、遺族年金の受給権者がいなくても、特別支給金の給付があるということです。
また、死亡した場合は、退社した時刻や自宅を出勤した時刻などが問題になることがあります。
遺族特別支給金は、定額の300万円、遺族ボーナス特別一時金は約200万円、合計500万円近い給付となりました。
通勤災害で死亡事故の場合の労災申請は、愛知労務にお任せください。
〇参考リンク
労災保険認定事例
厚生労働省「『アフターケア』制度のご案内」