関節可動域表示ならびに測定法の原則
文責 社会保険労務士 松井 宝史 2020.08.15
関節可動域表示ならびに測定法について解説
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関節可動域表示ならびに測定法の目的
日本整形外科学会と日本リハビリテーション医学会が制定する関節可動域表示ならびに測定法は、日本整形外科医、リハビリテーション医ばかりでなく、医療福祉、行政その他の関連職種の人々をも含めて、関節可動域を共通の基盤で理解するためのものである。
したがって実用的で分かりやすいことが重要であり、高い精度が要求される計測、特殊な臨床評価、詳細な研究のためにはそれぞれの目的に応じた測定方法を検討する必要がある。
基本肢位
Neutral Zero Methodを採用しているので、Neutral Zero Starting Positionが基本肢位であり、概ね解剖学的肢位と一致する。
ただし、肩関節水平屈曲・伸展については肩関節外転90°の肢位、肩関節外旋・内旋については肩関節外転0°で肘関節90°屈曲位。前腕の回外・回内については手掌面が矢状面にある肢位。股関節外旋・内旋については股関節屈曲90°で膝関節屈曲90°の肢位をそれぞれ基本肢位とする。
関節の運動
1) 関節の運動は直交する3平面。すなわち前額面、矢状面、水平面を基本面とする運動である。
ただし、肩関節の外旋・内旋、前腕の回外・回内、股関節の外旋・内旋、顎部と胸腰部の回旋葉、基本肢位の軸を中心とした回旋運動である。
また、足部の内がえし・外がえし、母指の対立は複合した運動である。
2) 関節可動域測定とその表示で使用する関節運動とその名称を以下に示す。
なお、下記の基本的名称以外によく用いられている用語があれば( )内に併記する。
(1) 屈曲と伸展
多くは矢状面の運動で、基本肢位にある隣接する2つの部位が近づく動きが屈曲、遠ざかる動きが伸展である。
ただし、肩関節、頸部・体幹に関しては前方への動きが屈曲、後方への動きが伸展である。
また、手関節、手指、足関節、足指に関しては、手掌又は足底への動きが屈曲、手背又は足背への動きが伸展である。
(2) 外転と内転
多くは前額面の運動で、体幹や手指の軸から遠ざかる動きが外転、近づく動きが内転である。
(3) 外旋と内旋
肩関節及び股関節に関しては、上腕軸又は大腿軸を中心として外方へ回旋する動き(手掌が上を向く動き)が回外、内方に回旋する動き(手掌が下を向く動き)が回内である。
(4) 回外と回内
前腕に関しては前腕軸を中心にして外方へ回旋する動き(手掌が上を向く動き)が回外、内方に回旋する動き(手掌が下を向く動き)が回内である。
(5) 水平屈曲と水平伸展
水平面の運動で、肩関節を90°外転して前方への動きが水平屈曲、後方への動きが水平伸展である。
(6) 挙上と引き下げ(下制)
肩甲帯の前額面の運動で、上方への動きが挙上、下方への動きが引き下げ(下制)である。
(7) 右側屈・左側屈
頸部、体幹の前額面の運動で、右方向への動きが右側屈、左方向への動きが左側屈である。
(8) 右回旋と左回旋
頸部と胸腰部に関しては右方に回旋する動きが右回旋、左方に回旋する動きが左回旋である。
(9) 橈屈と尺屈
手関節の手掌面の運動で橈側への動きが橈屈、尺側への動きが尺屈である。
(10) 母指の側外転と尺側内転
母指の手掌面の運動で、母指の基本軸から遠ざかる動き(橈側への動き)が橈側外転、母指の基本軸に近づく動き(尺側への動き)が尺側内転である。
(11) 掌側外転と掌側内転
母指の手掌面に垂直な平面の運動で、母指の基本軸から遠ざかる動き(手掌方向への動き)が掌側外転、基本軸に近づく動き(背側方向への動き)が掌側内転である。
(12) 対立
母指の対立は、外転、屈曲、回旋の3要素が複合した運動であり、母指で小指の先端又は基部を触れる動きである。
(13) 中指の橈側外転と尺側外転
中指の手掌面の運動で、中指の基本軸から橈側へ遠ざかる動きが橈側外転、尺側へ遠ざかる動きが尺側外転である。
(14) 外がえしと内がえし
足部の運動で、足底が外方を向く動き(足部の回内、外転、背屈の複合した運動)が外がえし、足底が内方を向く動き(足部の回外、内転、底屈の複合した運動)が内がえしである。
足部長軸を中心とする回旋運動は、回外、回内と呼ぶべきであるが、実際は、単独の回旋運動は生じえないので複合した運動として外がえし、内がえしとした。また、外反、内反という用語も用いるが、これらは足部の変形を意味しており、関節可動域測定時に関節運動の名称としては使用しない。
関節可動域の測定方法
1) 関節可動域は、他動運動でも自動運動でも測定できるが、原則として他動運動による測定値を表記する。自動運動による測定値を用いる場合は、その旨明記する[5の2の(1)参照]。
2) 角度計は十分な長さの柄が付いているものを使用し、通常は5°刻みで測定する。
3) 基本軸、移動軸は、四肢や体幹において外見上分かりやすい部位を選んで設定されており、運動学上のものとは必ずしも一致しない。
又、手指および足指では角度計のあてやすさを考慮して、原則として背側に角度計をあてる。
4) 基本軸と移動軸の交点を角度計の中心に合わせる。また、関節の運動に応じて、角度計の中心を移動させてもよい。必要に応じて移動軸を平行移動させてもよい。
5) 多関節筋が関与する場合、原則としてその影響を除いた肢位で測定する。
たとえば股関節屈曲の測定では、膝関節を屈曲しハムストリングをゆるめた肢位で行う。
6) 肢位は「測定肢位および注意点」の記載に従うが、記載のないものは肢位を限定しない。
変形、拘縮などで所定の肢位がとれない場合は、測定肢位がわかるように明記すれば異なる肢位絵を用いてもよい[5の2の(2)参照]。
7) 筋や腱の短縮を評価する目的で多関節筋を緊張させた肢位で関節可動域を測定する場合は、測定方法がわかるように明記すれば多関節筋を緊張させた肢位を用いてもよい。
測定値の表示
1) 関節可動域の測定値は、基本肢位を0°として表示する。
たとえば、股関節の可動域が屈曲位20°から70°であるならば、この表現は以下の2通りとなる。
(1) 股関節の関節可動域は屈曲20°から70°(または屈曲20°~70°)
(2) 股関節の関節可動域は屈曲70°、伸展は-20°
2) 関節可動域の測定に際し、症例によって異なる測定法を用いる場合や、その他関節可
動域に影響を与える突起すべき事例がある場合は、測定値とともにその旨併記する。
(1) 自動運動を用いて測定する場合は、その測定値を( )で囲んで表示するか、「自動」または「active」などと明記する。
(2) 異なる肢位を用いて測定する場合は、「背臥位」「座位」などと具体的に肢位を明記する。
(3) 多関節筋を緊張させた肢位を用いて測定する場合は、その測定値を( )で囲んで表示するが、「膝伸展位」などと具体的に明記する。
(4) 疼痛などが測定値に影響を与える場合は、「痛み」「pain」などと明記する。
参考可動域
関節可動域は年齢、性、肢位、個体による変動が大きいので、正常値は定めず参考可動域として記載した。関節可動域の異常を判定する場合は、健側上下肢の関節可動域、参考可動域、(附)関節可動域の参考値一覧表、年令、性、測定肢位、測定方法などを十分考慮して判定する必要がある。
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