今までの障害認定基準改正
文責 社会保険労務士 松井 宝史 2021.06.25
障害認定基準改正について時系列に沿って解説します。
障害年金の認定基準が少しずつ改正されてきました。
時系列に沿って解説をしてみます。
しっかり読んでいただき、自分に該当しそうであれば、確認後申請となります。
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平成29年12月1日の障害認定基準改正
平成29年12月1日から、障害年金の審査に用いる血液・造血器疾患の障害認定基準を一部改正します。
改正のポイントは以下のとおりです。
主な疾患の分類区分に応じた検査項目を見直します。
分類区分の名称(主な疾患) |
検査項目の主な見直し個所 |
①赤血球系・造血不全疾患(再生不良性貧血、溶結性貧血 等) |
「赤血球数」を削除し、「網赤血球数」を追加します。 |
②血栓・止血疾患(血小板減少性紫斑病、凝固因子欠乏症 等) |
「凝固因子活性」を追加します。 |
③白血球系・造血器腫瘍疾患(白血球・悪性リンパ腫、多発性骨髄腫 等) |
抹消血液中の「赤血球数」を「ヘモグロビン濃度」に変更します。 |
造血幹細胞移植についての規定を加えます。
造血幹細胞移植を受けた方は、移植片対宿主病の有無や程度などを考慮して認定します。
平成28年6月1日の障害認定基準改正
平成28年6月1日から、障害年金の審査に用いる代謝疾患(糖尿病)の障害認定基準を一部改正します。
改正後の糖尿病の障害認定は、治療を行ってもなお、血糖コントロールが困難な症状の方が対象となります。
具体的には、以下の条件を満たす方が対象です。
1.90日以上のインスリン治療を行っている方
2.Cペプチド値、重症性血糖、糖尿病ケトアシドーシス、高血糖高浸透圧症候群のいずれかが一定の程度の方
Cペプチド値は、インスリンが、膵臓からどの程度分泌されているかを把握するものです。
3.日常生活の制限が一定の程度の方
なお、糖尿病の合併症(糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症など)については、対象疾患ごとの基準(腎疾患や眼の障害など)によって認定されます。
改正のポイント
糖尿病については、以下のものを血糖コントロール治療が困難なものとして、障害等級の3級と認定します。
1.検査日より前に、90日以上継続して必要なインスリン治療を行っていること
2.次のいずれかに該当すること
(1)内因性のインスリン分泌が枯渇している状態で、空腹時または随時の血清Cペプチド値が0.3ng/ml未満を示すもの
(2)意識障害により自己回復ができない重症低血糖の所見が平均して月1回以上あるもの
(3)インスリン治療中に糖尿病ケトアシドーシスまたは高血糖高浸透圧症候群による入院が年1回以上あるもの
3.一般状態区分表のイまたはウに該当すること
一般状態区分表(抄)
区分 | 一般状態 |
イ |
軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの 例えば、軽い家事、事務など |
ウ |
歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助がひつようなこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの |
症状、検査成績と具体的な日常生活状況などによっては、さらに上位等級に認定されます。
なお、障害等級は、障害厚生年金では1~3級、障害基礎年金では1~2級があります。
内因性のインスリン分泌は、自分自身の膵臓から分泌されるインスリンのことです。
一般状態区分表は、日常生活の制限の程度をア~オの5段階で示した指標です。
平成27年6月1日の障害認定基準改正
平成27年6月1日から、障害年金の審査に用いる障害認定基準を一部改正します。
改正のポイントは以下のとおりです。
1.音声又は言語機能の障害
失語症の「聞いて理解することの障害」を障害年金の対象障害として明示し、また、障害の状態を判断するための検査結果などを参考として追加するなどの見直しを行います。
障害の程度 |
障害の状態 |
2級 |
発音に関わる機能を喪失するか、話すことや聞いて理解することのどちらか又は両方がほとんどできないため、日常会話が誰とも成立しないものをいう。 |
3級 |
話すことや聞いて理解することのどちらか又は両方に多くの制限があるため、日常会話が、お互いに内容を推論したり、たずねたり、見当をつけることなどで部分的に成り立つものをいう。 |
障害手当金 |
話すことや聞いて理解することのどちらか又は両方に一定の制限があるものの、日常会話が、お互いに確認することなどで、ある程度成り立つものをいう。 |
●障害の状態を判断するための参考を追加します。
<構音障害、音声障害、聴覚障害による障害>
発音不能な語音について確認するほか、発音に関する検査(例えば「語音発語明瞭検査」など)が行われた場合は、その結果も参考にします。
<失語症>
音声言語の障害(話す・聞く)の程度について確認するほか、失語症に関する検査(例えば「標準失語症検査」など)が行われた場合は、その結果も参考にします。
注:音声言語の障害と比較して、文字言語の障害(読み書き)の程度が重い場合には、その症状も勘案し、総合的に認定されます。
●音声又は言語機能の障害と他の障害の併合認定について規定します。
音声又は言語機能の障害と他の障害の状態を併せて認定される場合(併合認定)の代表的な例を追加します。
[併合認定の代表的な例]
①構音障害+「聴覚の障害」または「そしゃく・嚥下機能の障害」
②失語症+「肢体の障害」または「精神の障害(高次脳機能障害)」
注1:併合する各障害の程度によっては、上位等級にならない場合もあります。
注2:上記②に該当する場合は、別途診断書(「肢体の障害」用または「精神の障害」用)を提出する必要があります。
2.腎疾患による障害
●認定に用いる検査項目を病態別に分け、項目の追加を行います。
<①慢性腎不全>
区分 |
ア |
イ |
検査項目 |
内因性クレアチニンクリアランス |
血清クレアチニン |
単位 |
ml/分 |
mg/dl |
軽度以上 |
20以上30未満 |
3以上5未満 |
中等度以上 |
10以上20未満 |
5以上8未満 |
重度以上 |
10未満 |
8以上 |
eGFR(推算糸球体濾過量)が記載されていれば、血清クレアチニンの異常に替えて、eGFR(単位はml/分/1.73㎡)が10以上20未満のときは軽度以上、10未満のときは中等度異常と取り扱うことも可能です。
<②ネフローゼ症候群>
区分 | 検査項目 |
単位 |
異常 |
ア |
尿蛋白量 |
ℓ/日又はg/gCr |
3.5以上を持続する |
イ |
血清アルブミン(BCG法) |
g/dl |
3.0以下 |
ウ |
血清総蛋白 |
g/dl |
6.0以下 |
●各等級に相当する例示の中に検査項目の異常の数を入れます。
障害の程度 | 障害の状態 |
1級 |
上記②の検査成績が高度異常を1つ以上示すもので、かつ、一般状態区分表のオに該当するもの |
2級 |
1 上記①の検査成績が中等度又は高度の異常を1つ以上示すもので、かつ、一般状態区分表のエ又はウに該当するもの |
3級 |
1 上記①の検査成績が軽度、中等度又は高度の異常を1つ以上示すもので、かつ、一般状態区分表のウ又はイに該当するもの |
注:障害の認定は、異常値の数や一般状態区分表による障害の状態などによって認定されます。
●腎臓移植について従来の障害等級を維持する期間を見直します。
腎臓移植について、経過観察のために移植後1年間は従来の障害等級を維持することとし、それ以降は移植を受けた方の状況を踏まえて、障害等級の認定を行うこととします。
3.排せつ機能の障害
人工肛門を造設した場合などの障害認定を行う時期を見直します。
人工肛門を造設した場合や、尿路変更術を施した場合、完全排尿障害状態となった場合の障害認定を行う時期を、これらの状態になってから6か月を経過した日(初診日から起算して1年6か月を超える場合を除く)に見直します。
4.聴覚の障害
新規に障害年金を請求する方の一部について、他覚的聴力検査などを行うこととします。
聴覚の障害による障害年金を受給していない方が、1級(両耳の聴力レベルが100デシベル以上)の障害年金を請求する場合には、オージオメータによる検査に加えて、聴性脳幹反応検査(ABR)などの他覚的聴力検査又はこれに相当する検査を行うこととします。
平成26年6月1日の障害認定基準改正
平成26年6月1日から、障害年金の審査に用いる肝疾患の障害認定基準を一部改正します。
改正のポイントは以下のとおりです。
1.重症度を判断するための検査項目について見直しを行いました。
重症度を判断する検査項目・臨床所見とその異常値を見直しました。
検査項目/臨床所見 | 基準値 |
中等度の異常 |
重度異常 |
血清総ビリルビン |
0.3~1.2 |
2.0以上3.0以下 |
3.0超 |
血清アルブミン |
4.2~6.1 |
3.0以上3.5以下 |
3.0未満 |
血小板数 |
13~35 |
5以上10未満 |
5未満 |
プロトロンビン時間 |
70超~130 |
40以上70以下 |
40未満 |
腹水 |
- |
腹水あり |
難治性腹水あり |
脳症 |
- |
Ⅰ度 |
Ⅱ度以上 |
2.障害等級を客観的に判断するため、検査項目の異常の数を入れました。
各等級に相当する例示の中に検査項目の異常の数を入れました。
障害の程度 | 障害の状態 |
1級 |
前記1.の検査成績及び臨床所見のうち高度異常を3つ以上示すもの、又は高度異常を2つ及び中等度の異常を2つ以上示すもので、かつ、一般状態区分表のオに該当するもの |
2級 |
前記1.の検査成績及び臨床所見のうち中等度又は高度の異常を3つ以上示すもので、かつ、一般状態区分表のエ又はウに該当するもの |
3級 |
前記1.の検査成績及び臨床所見のうち中等度又は高度の異常を2つ以上示すもので、かつ、一般状態区分表のウ又はイに該当する |
※障害の認定は、異常値の数と一般状態区分表による障害の状態などによって認定されます。
3.アルコール性肝硬変の基準を追加しました。
アルコール性肝硬変については、継続して必要な治療を行っていること及び検査日より前に180日以上アルコールを摂取していないことについて、確認のできた者に限り、認定されます。
平成25年6月1日の障害認定基準改正
平成25年6月1日から、障害年金の審査に用いる眼の障害認定基準が改正されました。
視野の障害の2級の基準が一部追加されたため、今まで該当しなかった方が該当する可能性があります。
改正前:両眼の視野が5度以内(1/2視標)
改正後:改正前に加えて、次のいずれにも該当する方が2級に該当します。
(1)両眼の視野が10度以内(1/4視標)
(2)中心10度以内の8方向の残存視野のそれぞれの角度の合計が56度以下(1/2視標)
現在、障害年金を受けていない方は新たに障害年金を請求すれば、該当する可能性があります。
3級の障害年金を受けている方も2級になることがあります。
下記写真は、川崎市武蔵小杉にあるユニオンビルでの相談会風景です。
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