呼吸器疾患の障害の認定基準
文責 社会保険労務士 松井 宝史 2020.08.09
肺結核,じん肺,呼吸不全の障害の程度は次により認定します
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どうぞ、どんな些細なことでも結構ですのでご相談ください。
呼吸器疾患の障害
呼吸器疾患の障害は、3つに分かれます。
肺結核
◆肺結核(1級)
肺結核による障害の程度は、病状判定及び機能判定により認定されます。病状による障害の程度は、自覚症状、他覚所見、検査成績(胸部X線所見、動脈血ガス分析値等)、排菌状態(喀痰等の塗抹、培養検査等)、一般状態、治療及び病状の経過、年齢、合併症の有無及び程度、具体的な日常生活状況等により総合的に認定されます。
一部例示
認定時期前6カ月以内に常時排菌があり、胸部X線所見が日本結核病学会病型分類のⅠ型(広汎空洞型)又はⅡ型(非広汎空洞型)、Ⅲ型(不安定非空洞型)で病巣の広がりが3(大)であるもので、かつ、長期にわたる高度の安静と常時の介護を必要とするもの
◆肺結核(2級)
一部例示
認定の時期前6カ月以内に排菌がなく、学会分類のⅠ型(広汎空洞型)若しくはⅡ型(非広汎空洞型)又はⅢ型(不安定非空洞型)で病巣の広がりが3(大)であるもので、かつ、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とするもの
認定の時期前6カ月以内に排菌があり、学会分類のⅡ型(非広汎空洞型)で病巣の拡がりが1(小)又は2(中)であるもので、かつ、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とするもの
◆肺結核(3級)
一部例示
認定の時期前6カ月以内に排菌がなく、学会分類のⅠ型(広汎空洞型)若しくはⅡ型(非広汎空洞型)又はⅢ型(不安定非空洞型)で、積極的な抗結核薬による化学療養を施行しているもので、かつ、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とするもの
認定の時期前6カ月以内に排菌があり、学会分類Ⅳ型であるもので、かつ、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とするもの。
呼吸器疾患の障害による障害については、次のとおりです。
障害の程度 | 障害の状態 |
---|---|
1級 | 身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの |
2級 | 身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの |
3級 | 身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの |
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じん肺
じん肺による障害の程度は、病状判定及び機能判定により認定されます。病状による障害の程度は、胸部X線所見、呼吸不全の程度、合併症の有無及び程度、具体的な日常生活状況等により総合的に認定されます。
◆じん肺(1級)
胸部X線所見がじん肺法の分類の第4型であり、大陰影の大きさが1側の肺野の3分の1以上のもので、かつ、長期にわたる高度の安静と常時の介護を必要とするもの。
◆じん肺(2級)
胸部X線所見がじん肺法の分類の第4型であり、大陰影の大きさが1側の肺野の3分の1以上のもので、かつ、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とするもの。
◆じん肺(3級)
胸部X線所見がじん肺法の分類の第3型のもので、かつ、労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とするもの。
じん肺の機能判定による障害の程度は、呼吸不全の認定要領により認定されます。
じん肺関係
じん肺法によるエックス線写真像の分類
分類 |
エックス全写真の像 |
第1型 |
両肺野にじん肺による粒状影または不整形陰影が少数あり、かつ、じん肺による大陰影がないと認められるもの |
第2型 |
両肺野にじん肺による粒状影または不整形陰影が多数あり、かつ、じん肺による大陰影がないと認められるもの |
第3型 |
両肺野にじん肺による粒状影または不整形陰影が極めて多数あり、かつ、じん肺による大陰影がないと認められるもの |
第4型 |
じん肺による大陰影があると認められるもの |
付記
(1)✕線写真像の分類はPR₀~PR₄によって示すことがあるが、それぞれ次の意味を示すものである。
PR₀・・・じん肺の所見がない
PR₁・・・エックス線写真の像が第1型である
PR₂・・・エックス線写真の像が第2型である
PR₃・・・エックス線写真の像が第3型である
PR₄(A,B)・・・エックス線写真の像が第4型(じん肺による大陰影の大きさが一側の肺野の3分の1以下のもの)である
PR₄(C)・・・エックス線写真の像が第4型(じん肺による大陰影の大きさが一側の肺野の3分の1を超えるもの)である
(2)粒状影は主要陰影の径に従って記号を付すが、それぞれの意味を表すものである。
p =直径1.5mmまでのもの
q(m)=直径1.5mmを超えて3mmまでのもの
r(n)=直径3mmを超えて10mmまでのもの
(上記中かっこ内は旧来用いられていたタイプについての記号である)
(3)粒状影はその密度に応じて第1型、第2型、第3型に分類するが、更に12階尺度を用いて細分する。
12階尺度の概要は次のとおりである。
0/-・・・正常構造が特によくみえるもの(普通若い人にみられる。このような所見はあまり多くない。)
0/0・・・じん肺の陰影が認められないもの
0/1・・・じん肺の陰影は認められるが、第1型と判定するには至らないもの
1/0・・・第1型と判定するが、標準エックス線フィルムの「第1型(1/1)」に至っているとは認められないもの
1/1・・・標準エックス線フィルムの「第1型(1/1)」におおむね一致すると判定されるもの
1/2・・・第1型と判定するが標準エックス線フィルムの「第1型(1/1)」よりは数が多いと認められるもの
2/1・・・第2型と判定するが標準エックス線フィルムの「第2型(2/2)」よりは数が少ないと認められるもの
2/2・・・標準エックス線フィルムの「第2型(2/2)」におおむね一致すると判定されるもの
2/3・・・第2型と判定するが、標準エックス線フィルムの「第2型(2/2)」よりは数が多いと認められるもの
3/2・・・第3型と判定するが、標準エックス線フィルムの「第3型(3/3)」よりは数が少ないと認められるもの
3/3・・・標準エックス線フィルムの「第3型(3/)」におおむね一致すると判定されるもの
3/+・・・第3型と判定するが、標準エックス線フィルムの「第3型(3/3)」よりは数が多いと認められるもの
(4)大陰影(1つの陰影の長径が1cmを超えるもの)は、その径に従って次のように分類する。
A・・・陰影が1つの場合には、その最大径が1㎝を超え5㎝までのもの。数個の場合には、個々の影が1㎝以上で、その最大径の和が5㎝を超えないもの
B・・・陰影が1つまたはそれ以上で、Aを超えており、その面積の和が1側肺野の1/3(右上肺野相当域)を超えないもの
C・・・陰影が1つまたはそれ以上で、その面積の和が1側肺野の1/3(右上肺野相当域)を超えるもの
呼吸不全
呼吸不全による障害の程度の判定は、動脈血ガス分析値を優先しますが、その他の検査成績等も参考とし、認定時の具体的な日常生活状況等を把握して、総合的に認定されます。
◆呼吸不全(1級)
動脈血ガス分析値及び予測肺活量1秒率の検査成績が高度異常を示すもので、かつ、身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就寝を強いられ、活動の範囲が概ねベッド周辺に限られるもの
◆呼吸不全(2級)
動脈血ガス分析値及び予測肺活量1秒率の検査成績が中等度異常を示すもので、かつ、身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就寝しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの又は歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの
◆呼吸不全(3級)
動脈血ガス分析値及び予測肺活量1秒率の検査成績が軽度異常を示すもので、かつ、歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの又は軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの
☆動脈血ガス分析値
動脈血酸素分圧 単位 Torr 70~61(軽度異常)
動脈血酸素分圧 単位 Torr 60~56(中等度異常)
動脈血酸素分圧 単位 Torr 55以下(高度異常)
動脈血二酸化炭素分圧 単位 Torr 46~50(軽度異常)
動脈血二酸化炭素分圧 単位 Torr 51~59(中等度異常)
動脈血二酸化炭素分圧 単位 Torr 60以上(高度異常)
☆ 予測肺活量1秒率
予測肺活量1秒率 単位 % 40~31(軽度異常)
予測肺活量1秒率 単位 % 30~21(中等度異常)
予測肺活量1秒率 単位 % 20以下(高度異常)
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