複数の会社等に雇用されている労働者の方々への労災保険給付が変わります
文責 社会保険労務士 松井 宝史 最終更新日:2021.02.23
「労働者災害補償保険法」が改正されました(令和2年9月1日)
改正法の施行日(令和2年9月1日)以降に、けがをした労働者の方や病気になった労働者の方、お亡くなりになった労働者のご遺族の方が以下の改正事項の対象となります。
※ 原則けがなどをされた時点で、複数の会社で働かれている方が対象です。
賃金額を合算して保険給付額等を決定します。
現行制度
災害が発生した勤務先の賃金額のみを基礎に給付額等を決定していました。
改正後
すべての勤務先の賃金額を合算した額を基礎に給付額等を決定していきます。
※ 対象となる給付は、休業(補償)給付、遺族(補償)給付や障害(補償)給付などです。
※この他に、すべての勤務先の負荷(労働時間やストレス等)も総合的に評価して労災認定できるかどうかを判断するようになります
負荷(労働時間やストレス等)を総合的に評価(重要)
現行制度
それぞれの勤務先ごとに負荷(労働時間やストレス等)を個別に評価して労災認定できるかどうかを判断
改正後
それぞれの勤務先ごとに負荷(労働時間やストレス等)を個別に評価して労災認定できない場合は、すべての勤務先の負荷(労働時間やストレス等)を総合的に評価して労災認定できるかどうかを判断
今回の制度改正では、けがをしたときや病気になったときなどに、2つ以上の会社等に雇用されている方や、けがをしたときや病気になったときなどに1つの会社等でのみ雇用されている場合(又はすべての会社等を退職している場合)であっても、そのけがや病気などの原因・要因となるもの(例;長時間労働、強いストレスなど)が、2つ以上の会社等で雇用されている際に存在していたならば、制度改正の対象となります。
※ 労働者の方だけでなく、特別加入者の方についても今回の制度改正の対象となります。
※ 対象疾病は、脳・心臓疾患や精神障害などです。
※本制度改正については、労災保険のメリット制には影響しません。
自社で働いている従業員の労働時間管理が強く求めれれるようになります。
兼業や副業は、申請制度などで管理していく必要があると思います。
申請書には、他社で働く労働時間を申告してもらう必要があると思われます。
また、申告した時間以上働く場合には、許可を取り消す条項も必要と思われます。
複数事業労働者(ダブルワーク)の労災事故
複数事業労働者とは、傷病等の原因又は要因となる事由が発生した時点において、事業主が同一人でない二以上(複数)の事業に同時に使用されていた労働者のことをいいます。
つまり、メインの会社に勤務しながら、アルバイトなどをしている場合をいいます。
そのような方が、労災事故にあった時、労災保険の給付基礎日額については、今までは事故にあった会社の給与をもとに給付基礎日額が計算されていました。
令和2年9月1日以降の傷病当については、複数事業ごとに算定した給付基礎日額に相当する額を合算して算定することになりました。
例えば、アルバイト中に荷物の配達をバイクでしていて、雨でスリップして膝の骨折をしてしまったとします。
今までですと、アルバイト先の会社の給料だけで給付基礎日額を計算していました。
ところが、これからはアルバイト先の会社だけでなく、メインで勤めている会社の給料で計算した給付基礎日額も合算します。
おケガをした方は、このことを良く知っておいて下さい。
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〇参考リンク
労働者災害補償保険法の改正について~複数の会社等で働かれている方への保険給付が変わります~(厚生労働省)
令和元年度「過労死等の労災補償状況」を公表します(厚生労働省)
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